❐北方四島の話題
サハリン・インフォ2019/3/11
●…クリル諸島の住民はサハリン本島と択捉島、国後島間の航空運賃を、住民登録の有無にかかわらず一律片道5,950ルーブル(約1万円)に戻すとしたリマレンコ知事代行の方針を支持している。州当局は2016年に経費節減を狙いに運賃補助制度を変更。サハリンやクリル地域に住民登録している住民に対してのみ補助を適用し、登録されていない人は片道15,000ルーブルとした。
●…このシステムでは島に定住しているからといって補助が受けられるとは限らない。択捉島のゴリャチエ・クリュチ(瀬石温泉)の教師ビクトル・シロさんは、2018年5月に前知事が択捉島を視察した際、「自分は軍が管理している地域に住んでいるため住民登録が出来ず、補助対象となっていない」と訴えた。これを受けて、州政府は運賃を7,500ルーブルに値上げして、すべての人に適用することを提案したが、値上げしての単一運賃に理解は得られなかった。
●…クリル地区議会のタチアナ・ベラウソワ議長は、サハリン地域の議会議長が集まった会議で、以前のように単一運賃システムに戻すことが、地域の発展に役立つ」と強く主張した。2019年2月、リマレンコ知事代行が国後島のユジノクリリスク(古釜布)を訪問した後、自身のインスタグラムで「私は決心した。(3月31日の)夏のスケジュールから、住民登録に関わらずサハリン—クリル間の運賃は5,950ルーブルとする」と表明した。
●…先週末、Sakh.comの特派員は知事代行の決定について島民から意見を聞いた。多くの人が肯定的に捉えている中で、否定的な意見も見られた。それは、高い運賃は犯罪を意図する人が簡単に島に入ってこられなくなる、一種の障壁をつくったというものだ。これに対して肯定派は「犯罪者は必要があれば17,000ルーブル(※以前の記事では15,000ルーブルと書かれていた)のチケットを買ってでも来るし、運賃が安い船でも来られる」「単一運賃に戻すことで、島を出て勉強する子供たちが我が家に帰ってきやすくなるし、かつて島に住んでいた人たちがクリル諸島を懐かしみ、友人たちと再会する機会が増える」と話す。
●…また、別の住民は「本土に引っ越した人の多くは、親戚が択捉島に埋葬されている。彼らは墓参りをしたくても、高い運賃ではチケットを買えない。サハリン—クリル間(飛行時間1時間)のチケットはサハリンからモスクワ(9時間)へ飛ぶよりも高いのだから」と皮肉った。観光面でのメリットを説く人もいた。「択捉島の写真をSNSに投稿すると、見た人から行ってみたいとメッセージが寄せられる。しかし、高額な運賃にみんな驚く。単一運賃で安くなれば、もっと観光客が訪れる」–。
●…単一運賃に戻すとした知事代行の方針を冷静に見ている人もいた。「今年9月の州知事選挙に向けて、主要な候補であるリマレンコ知事代行は、クリルの人々を喜ばせようとしている。実際、選挙運動はもう始まっている。単一運賃に戻すことはすばらしいことだが、9月の知事選挙が終わった後に、いつの間にか値上げされないよう注意しなければならない」–。
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