択捉島の紗那墓地に残る名も知れぬ日本人の小さな墓石と立派なロシア人島民の墓。日ロのお墓が同居する紗那墓地で、クリル行政府は第二次大戦で戦死した兵士の古い墓を調査し、修復する取組を続けている。
❐北方四島の話題
サハリン・インフォ2019/5/16
●…大祖国戦争に参加し、択捉島のクリリスク(紗那)墓地に埋葬された兵士の墓の
修復プロジェクトで、無関係の少女の墓に兵士の名前を刻んだ墓石を設置していた
ことが分かり、択捉島を管轄するクリル地区行政府は原因を究明するため調査委員
会を設置した。兵士の墓の修復プロジェクトは、お墓を守る家族や親戚が島を離れ
てしまい、放置された兵士の墓を再建し、栄誉を後世に伝えていこうと地区議会の
主導で立案された。市民有志をはじめ文化機関、行政職員らが墓の調査を進め、修
復リストを作成した。いくつかの墓については古老の記憶に基づいて場所を特定し
た。何年もの間、クリリスク墓地では記録が保存されないまま埋葬が行われてきた。
墓石自体が失われたものもあった。調査は1年以上かけて行われ、2018年9月に完了。
20人の墓が修復され、島外から取り寄せた花崗岩のモニュメントが建てられた。忘
れられた氏名や兵士の墓を見つける調査は今も続いている。住民たちはこの取り組
みを高く評価した。しかし、墓を取り違えて修復するというあり得ない事件は2018
年に起きた。行政府は、報道されるまでその事実を知らなかった。原因を究明する
ため一般住民を交えた委員会を設置した。別人の墓に設置されたモニュメントは数
日以内に、兵士の墓に据えられる。
紗那墓地で少女の墓に間違って設置された兵士のモニュメント(左)と、もともとある兵士の墓(右)
戦争時代を体験した子供たちへの「贈り物」問題でも調査委員会設置
●…残念なことに今日、択捉島には大祖国戦争に参加した兵士は一人も残っていな
い。例年、5月9日の戦勝記念日前に、行政府から退役軍人や未亡人らにお祝いが贈
られるが、択捉島の場合は、未亡人と戦争時代に幼少期を過ごした「戦争の子供た
ち」69人が対象。今年は1万ルーブル相当の食糧などが贈られた。贈り物の伝達は、
戦勝記念日の数ある行事の1つに過ぎず、贈り物の食糧は駐屯する軍から提供された
ものだ。そして今年5月、袋詰めの食料を受け取った高齢者の家族は「まるで施しも
のみたいだ」と不快感を覚え突き返す事件が起きた。配布業務は例年、図書館職員
が担当しているが、今年の贈り物の不適切な品質について、なぜ担当職員が行政府
に知らせなかったのか原因は不明のままだ。行政府では「贈り物問題」についても
調査委員会を立ち上げた。行政府は今回の出来事を率直に反省し、今後このような
間違いを起こさないことを約束している。
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