❐北クリルの話題
サハリン・インフォ2020/5/28
世界自然保護基金(WWF)のカムチャツカ・エコリージョンによると、今年春に北クリル諸島で実施した個体数調査で、ラッコが激減していることが分かった。毛皮が珍重されたラッコは1世紀以上にわたって乱獲され、20世紀のはじめには絶滅の危機に瀕した。その後、保護政策によって生息数が回復し、2003年には15,000頭を超えるまでになった。しかし、2017年にはいくつかの地域で80%まで減少した。今年春の調査では、2017年と比較してパラムシル島で80%、シュムシュ島で55%、それぞれ激減した。結局、この地域では219頭しか確認できなかった。海洋哺乳類評議会のセルゲイ・コルネフ氏は「過去10年間の北クリルでの減少は異常だ。体も小さくなっている。以前から生息地として知られていた場所のいくつかは空っぽだ。パラムシル島の西部、北部、オホーツク側では確認できなかった」と話す。生息数の減少理由はまだ解明されていないか、原因は特定の一つということはない。いくつかの要因が関連して影響している。食糧の不足、病気、生息数の過剰、人間の影響などだ。WWFロシアの持続可能な海洋漁業プログラムのコーディネーターであるセルゲイ・コロステレフ氏は「人為的要因が最も可能性が高い。北クリル諸島で小型漁船による流し網漁が行われていた2008~2015年はラッコが減少している。この地域で今も使用されているギルネットによる刺し網漁は流し網と大差ない。ラッコは網に絡まって死ぬ。エサが確保できなくなると、生息地を離れてしまう。油汚染もラッコにとっては致命的だ」と語る。WWFは今年、北クリル諸島での2度の調査を予定している。科学者は個体群の動態に関する情報を収集し、今後の対策に役立てる。
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