国の登録有形文化財への指定に向けて作業が進められている根室市の「千島電信回線陸揚庫」–。小春日和の11月12日、久しぶりに写真を撮りに行ってきた。根室海峡を挟んで、国後島の泊山、羅臼山、はるか海上に爺爺岳の三山が雪をかぶった雄姿を見せてくれた。
泊山 羅臼山 爺爺岳
陸揚庫は終戦直後まで、根室市のハッタリ浜と国後島ケラムイ崎との間の約38kmに敷設された海底ケーブルを陸上の電信線と接続させるための施設。根室から国後島へ、さらに国後島の北端から再び海底にもぐり択捉島北端の村蘂取までつながっていた。
陸揚庫は鉄筋コンクリート造りで幅3.8m、奥行き5.7m、高さ3.7mの箱型で、2柱の門が残っている。根室—ケラムイ崎の海底ケーブルが敷設されたのは1900年。その際に陸揚庫も建設されたとすれば、築後120年ということになるが、それを裏付ける資料が見つかっていない。むき出しになった鉄筋の端がU字型に丸められていることから、昭和に入ってからの建造ではないかという意見もある。明治、大正期の鉄筋は曲がり方が直角なのだそうだ。だとしても90年前後は経過しているのは間違いない。
海から12m、波浪と風雪が吹き付ける過酷な環境で、モルタル外壁が潮風や凍結融解から内側のコンクリート躯体を保護してきたが、前回写真を撮った2017年と比べると、西側壁面の円形状の浮きはさらに悪化し、浮き上がりが大きくなっているように見えた。ゆっくりと内部がむしばまれている、そんな印象だ。
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