米国務省がグリーンカードの申請で、南クリル(北方四島)で生まれたロシア人の出生国を日本としている問題について、島の住民たちは全く関心がないようだ。彼らの差し迫った問題は新型コロナの感染拡大と高騰する食料品価格だった。(astv.ru 2020/12/10)
この問題についてロシア外務省は「米国は報復主義、第二次大戦の結果を変えようとしている」と批判。トルトネフ副首相は「アラスカのアメリカ人は帝政ロシアの市民とみなされるべき」と提案したが、南クリルの住民に話を聞くと–。
択捉島在住のアレクセイ・サクノフは本格的な冬を迎え、本土からの食糧供給が大丈夫なのか、そっちの方が心配だ。「米国がこの島々をどうしたいのかに関係なく、ここは私たちの島だ」と語った。「冬になると流氷のせいで船が島に近づけず、飛行機で運ばれてくる物資しかない。問題は製品の不足ではなく、価格なんだ。トマトは1kg600ルーブルもする。誰も飢えてはいないが、価格の高騰は悪夢た」と付け加えた。
択捉島のハーマン・バシュニクは観光業を営み、青年会議所の会長も務める。彼によると、今年は新型コロナの影響で、サハリンや本土西部から多くの観光客が流れ込んだ。すぐにホテルが不足したが、起業家は新しいホテルの建設に着手している。これまで択捉島の観光は夏と秋だけだったが、これからは冬にも観光客が訪れると予想する。「こんなことは初めてだ。島にあるいくつも火山は、写真家やアーティストにとってインスピレーションの源になるようだ」–。ロシア人はたくさん来るが、外国人観光客は少ない。新型コロナが流行する前、日本人が南クリル諸島を訪れていた。「年に数回、団体で来ていた。ロシアにビザを申請する必要がないビザなし交流の枠組みがあり、彼らにとって危険な前例をつくる必要はない。「ビザを取得すればロシア領と認めたことになるからね。彼らは先祖の墓を訪れる。墓地には標柱が1本建っていて、彼らはその周りをきれいにしていく」–。感染拡大の影響でビザなし交流は止まった。しかし、その原因は新型コロナウイルスだけではないという。「私たちの文化は非常に異なっている。互いに隣人だと感じさせるものは何もない。商品が直接入ってくるわけでもない。日本車はウラジォストクから運んでくるのだから…」
アーティストのエフゲニア・キトラルは択捉島で生まれ育った。米国の立場は彼女には全く関係がないようだ。新型コロナの感染が広がる以前は、日本人と島のロシア人はお互いに訪問し合い、アメリカやヨーロッパから観光客も来ていた。南クリルの住民は日本との間でビザなし交流の仕組みを持っている。古くから島に住んでいるロシア住民は日本人家族と一緒に暮らした経験を持っている。
「私はロシアの町クリリスク(紗那)で生まれた。出生証明書にはロシア語で『ロシア連邦の市民』と書かれている。アメリカの立場について私が何かを感じる必要がある? 何もないでしょ。残念ながらロシアでも、私たちが住んでいる島の場所を知らない人がいるんだから。地理的な場所に関係なく、島に来られる人はみんな歓迎だわ」–。択捉島のアーティストは最も近い隣人だけでなく、遠いロシアの人々にも来てほしいと思っている。「私たちの島では時間がゆっくりと流れていく。大都市では時間も人も急いでいるでしょ」と語った。
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