『元島民』(釧路新聞2021/2/22「余塵」より)
2月は8月とともに「北方領土返還運動全国強調月間」とされている。2月7日の「北方領土の日」を中心に全国の県民会議などを通じてさまざまな運動が行われたはずだ。
四島交流センター「ニ・ホ・ロ」が発行している「北方領土 今日は何の日?」によると、1956(昭和31)年のきょう21日は、根室町と合併する前の歯舞村に「歯舞諸島対策委員会」が結成された日–とある。日ソ国交回復により歯舞・色丹の返還の可能性が高まったとして返還後の島の復興を考えるため結成された。
この年の10月、歯舞群島と色丹島を日本に引き渡すとした「日ソ共同宣言」が署名されている。これを受け歯舞村では提灯行列が練り歩いたとあり、当時の写真が「ニ・ホ・ロ」などに展示されている。が、今も返らぬままだ。
先頃、元島民が亡くなった。90歳だった。北方領土とのビザなし交流では根室港で団員を「いってらっしゃい」と大声で送り出し、出迎えにも駆け付けていた。19年12月の中央アピールでは日比谷公園での決意表明に立ち、89歳とは思えぬ大きな声で思いを語り会場の感動を誘ったそうだ。
返還を本当に喜ぶ元島民(6000人弱)が一人でも多くいるうちに–この言葉は重い。(山本 繁寿)
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