北方領土の元島民らでつくる千島歯舞諸島居住者連盟(千島連盟、札幌)は14日、本年度の北方四島ビザなし渡航の日本側第1陣として、5月14~17日に予定していた国後島への「自由訪問」の実施を断念した。新型コロナウイルスの影響で、日ロ間の協議が進んでおらず、予定通りの訪問は困難と判断した。新型コロナの感染状況は全面中止に追い込まれた昨年から大きくは改善しておらず、今年も実施のめどが立たない状況が続きそうだ。(北海道新聞2021/4/15)
千島連盟は14日、今回の自由訪問に参加を希望していた元島民ら19人に対し、実施を断念したことを文書で通知した。国後島出身で千島連盟の脇紀美夫理事長(80)=根室管内羅臼町=は「元島民としては一日でも早く、事業の開始を願うだけ。コロナが収束に向かい、一回でも多く実施できることを望む」と話した。
四島ビザなし渡航は《1》元島民らとロシア人島民の相互理解促進を目的としたビザなし交流《2》元島民の遺族による北方領土墓参《3》元島民と家族が元居住地を訪れる自由訪問―の三つの枠組みがあり、例年は3月の日ロ代表者間協議で年間の事業計画を決めてきた。
ただ今年はコロナ禍で協議のめどが立っていない。日ロ外交当局間では電子メールによる調整が続いているものの、四島側にはビザなし実施に伴う新型コロナの感染拡大を懸念する声が強く「具体的な計画を立てる段階には至っていない」(日本側関係者)という。
日本側は、5月中に北方領土墓参とビザなし交流もそれぞれ1回予定しているが、実現は困難とみられる。(村上辰徳、古田夏也)
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