千島歯舞諸島居住者連盟(千島連盟)が本年度最初の北方領土ビザなし渡航となる5月の国後島への自由訪問を断念したことに、元島民らは落胆を隠せない。新型コロナウイルス禍の特殊事情に理解を示しつつも、昨年も全てのビザなし渡航が中止になっており「高齢化が進む元島民のふるさとへの思いに応えてほしい」と早期再開を望む声が上がっている。
「新型コロナが収束しないと難しいのは分かるが、見送りとなると寂しい」。古林貞夫さん(82)=国後島出身=はそう語る。
漁業の仕事の都合で今年のビザなし渡航への参加は予定していなかったが「参加した仲間から島の様子を聞くことで『自分も次は参加しよう』という刺激になる。今のように先が見通せないと、気持ちもしぼんでしまう」と早期再開を願った。
千島連盟根室支部長の宮谷内亮一さん(78)=国後島出身=は「故郷や墓地を訪れるのは人道的なもの。新型コロナだから何もできないと諦めるのではなく、できることを具体的に模索してほしい」と訴える。
河野太郎沖縄北方担当相が記者会見でビザなし渡航参加者へのワクチン接種は「優先順位に入っていない」と述べたことについて「ビザなし実施を重要視していないと、ロシア側に誤ったシグナルを与えるのではないか」と懸念する。
千島連盟副理事長の河田弘登志さん(86)=歯舞群島多楽島出身=は「新型コロナが収まらないと難しい。全国からビザなし渡航の参加者が根室に集まるのもいかがなものか。早く収束するよう祈るだけだ」と話している。(武藤里美、黒田理)
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