択捉島・瀬石温泉 ロシア軍の村で人口急増 兵士用宿舎新設 複合商業施設計画も

 ロシアが実効支配する北方領土択捉島で、軍が駐留する村ガリャーチエ・クリューチ(瀬石温泉)の人口が急増している。近年の軍備増強を背景にインフラ整備が進み、人口は数年で5割以上増え、島最大の集落に拡大。択捉島を事実上管轄するサハリン州クリール地区などは軍の長期駐留をにらみ、幼稚園や複合商業施設などの建設に動きだしており、さらに開発が続きそうだ。(北海道新聞2021/4/20)

 「ベビーカーの子どもと母親の多さを目の当たりにした。村は発展途上だ」。4月上旬、瀬石温泉を視察したサハリン州政府の幹部は、択捉島の地元紙「赤い灯台」にそう感想を語った。瀬石温泉は島の中心地、紗那(クリーリスク)から南西23キロにある国防省が管理する村。第18機関銃・砲兵師団の司令部があり、村民の大半は軍の関係者だ。

 ロシア連邦統計局によると、瀬石温泉の人口は2017年に1374人だったが、18年に紗那を抜き、20年1月1日時点で2168人。軍が進める北方領土での軍備増強に合わせ、18年以降、兵士用宿舎の新設が相次ぎ、インフラ整備が追いついていない。

 赤い灯台によると、クリール地区のロコトフ地区長は「23年に240人の子どもが通う幼稚園と、1日60人が診察を受ける診療所の建設に着手する。国防省が既に土地を確保し、現在、設計段階だ」と説明。紗那と結ぶ道路の舗装工事が始まっており、1~2年以内に紗那にある映画館の分館や高速インターネットが利用できる図書館、スケートリンクも開設予定という。

 昨年10月には、択捉島の水産会社「コンチネント」が自費で大型遊具を備えた児童公園を新設。同社は軍や地区行政府とともに、商店や美容室、カフェなどが入る複合商業施設を建設する計画で、師団のチェルネンコ副司令官は「施設は住民の社会的ニーズを満たすだろう」と強調する。

 日本政府は北方領土の軍事・社会インフラ整備に繰り返し抗議しているが、ロシア側は応じていない。プーチン政権は対米核戦力の拠点と位置付けるオホーツク海の防衛で、クリール諸島(千島列島と北方領土)を戦略的に重視しており、駐留部隊の生活基盤の整備を急いでいる。(ユジノサハリンスク仁科裕章)

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