根室市が北方領土ビザなし交流のあり方を考える専門家会議の発足に合わせ、17日に道立北方四島交流センターで開いたシンポジウムでは市内在住の元島民、市民ら5人が意見を交換した。来年で30年を迎える交流を振り返り、四島との新たな地域間交流についても話が及んだ。(北海道新聞2021/7/18)
千島歯舞諸島居住者連盟(千島連盟)の河田弘登志副理事長=歯舞群島多楽島出身=は「最初にビザなしで北方領土に行ったときに日本人の領土だと率直に言った。交流を通じて言いたいことをきちっと言うのが大切ではないか」。色丹島元島民の得能宏さんは1992年4月にロシア人島民が最初に根室・花咲港に来たときを思い起こし「ロシア側から来てくれたのが感慨深かった。なんとしても交流を続けていかなければならない」と強調した。
根室商工会議所の山本連治郎会頭は「ビザなし交流が30年も続くとは思っていなかった」と率直に振り返り「続いているのが大きな成果だ。人的、文化的、経済的交流の火を絶やさず、拡大しないといけない」と述べた。
根室管内1市4町は四島との新たな地域間交流ができないか模索しており、専門家会議の検討課題の一つだ。ビザなし交流の支援団体代表で元島民2世の本田幹子さんは地域住民同士の交流について「北方領土での共同経済活動の話が出たときに、この地域を特区にして管内と四島住民だけは自由に行き来できればいいのにと思った」と話した。
新型コロナウイルスの影響でビザなし交流は、昨年は全面中止となり、今年も8月までの見送りが決まったが、「人間関係が継続していることが財産」とする意見も出た。
シンポジウムには基調講演した岩手県立大の黒岩幸子教授も参加した。(黒田理、川口大地)
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