政府は新型コロナウイルスの影響で中断している北方四島ビザなし渡航について、残る9月分も取りやめ、2年連続で全面中止とする方針を固めた。近く発表する。政府は、四島周辺の船上で慰霊祭などを行う「洋上慰霊」の本格検討に入るが、感染拡大が続く中、慎重論も根強い。(北海道新聞2021/8/11)
複数の日ロ外交筋が明らかにした。ビザなし渡航には三つの枠組みがあり、今年は5~9月にビザなし交流9回、自由訪問7回、墓参3回の計19回を計画。8月までの計13回分は、既に中止が決まっている。
政府は今年、渡航に使うチャーター船「えとぴりか」(1124トン)に感染対策を施し、早期の再開を模索。ロシア側と対面での協議は実施できずメールでやりとりを続けてきた。しかし、四島側の医療体制への懸念のほか、日本国内でも8月末まで6都府県に緊急事態宣言が再発令されるなど感染拡大が続き、9月中の実施も困難と判断した。
船上で行う洋上慰霊は中止になった場合の新事業として、元島民らでつくる千島歯舞諸島居住者連盟や道が実施を求めていた。元島民からは、できるだけ島に近づいた形での実施を求める声が出ているが、政府は日本側の判断で実施できる日ロ中間ラインを越えない形を想定している。
政府関係者によると、参加人数を大幅に絞るなど感染対策を徹底した上で、10月ごろの実施を視野に入れるが、実現できるかは感染状況次第とみられる。外務省内には「上陸しない形が既成事実化してしまう恐れもある」との懸念もあり、政府内の調整が難航する可能性もある。
昨年は全面中止に伴って、北方領土周辺で航空機による上空からの慰霊事業を行った。(古田夏也、武藤里美)
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