洋上慰霊断念「むなしい」 根室の元島民ら落胆

 北方領土ビザなし渡航の2年連続中止を受け、道が検討していた「洋上慰霊」の見送りが決まり、元島民らは故郷に近づき慰霊する方策を断たれる形になった。高齢の元島民からは「残念を通り越して、むなしい」などと落胆の声が聞かれた。(北海道新聞根室版2021/9/10)

 道は日ロ中間ラインを越えず、船上から慰霊祭を行う洋上慰霊を検討していたが、道内の新型コロナウイルスの感染状況を踏まえ、道議会に8日、実施断念を報告した。千島歯舞諸島居住者連盟(千島連盟)も既に連盟主催の洋上慰霊の見送りを決めている。

 国後島出身で千島連盟根室支部の宮谷内亮一支部長(78)は新型コロナの感染状況から「断念はやむを得ない」と考える。一方で「領土問題の時計の針が止まっている今だからこそ、洋上慰霊に期待していた。島に眠る人たちに手を合わせる機会がない。悲痛な思いを、どこに持って行けばいいのか」と語った。

 道は昨年、北方領土の手前を航空機で飛ぶ「上空慰霊」を実施した。洋上慰霊も中間ラインを越えないため、四島に上陸しない形での慰霊が既成事実化するとの懸念もあった。

 だが、上空慰霊に参加した歯舞群島多楽島出身の武隈聡さん(78)=根室市=は「上陸できなくても島に近づける機会があるなら参加したい」と洋上慰霊に期待してきた。島には幼くして亡くなったきょうだいが眠っており、亡母からは「島に行ける機会があれば行ってほしい」と遺言を託されていた。「参加者をうんとしぼってでもやってほしかった」と残念がった。(武藤里美)

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