北方領土の暮らしや返還運動などについて紹介する「県北方領土史料室」(黒部市生地中区)が今月、開設から1年を迎える。同史料室のある黒部市コミュニティセンターで23日、1周年記念セレモニーが行われ、参加者らが領土問題について思いを新たにした。(読売新聞富山版2021/09/24)
本県は北方領土からの引き揚げ者が北海道に次いで2番目に多い。元島民の高齢化も進む中、次世代に北方領土問題を伝えるため昨年9月29日に開設した史料室では、当時の島民の暮らしなどを伝えるパネルや史料を展示している。
同史料室を整備した県などでつくる北方領土返還要求運動県民会議によると、この1年間で県内や北海道、関東など全国から6270人(20日時点)が訪れ、近隣の学校など12団体の見学を受け入れた。今月からは、当時の島民の生活の様子や島の風景を写した写真のカラー版を新たに展示。アニメで島の様子を学べたり、仮想現実(VR)で町並みを体験できたりするタブレット端末も設置した。
セレモニーには新田知事や、室長の黒部市の大野久芳市長、沖縄・北方問題特別委員長の鈴木宗男参院議員など約70人が出席した。新田知事は「北方領土は祖先が切り開いた我が国固有の領土。今後も県として問題に取り組み、運動に終わりの日が来るよう願う」とあいさつ。大野市長は「史料室をさらに多くの方々に知ってもらうことが室長としての使命だ」と語った。
島の風景、記憶写真で 元島民3世・山田さん
県北方領土史料室が開設から1年となるのに合わせ、元島民3世で富山市出身の写真家・山田淳子さん(39)(東京都)が元島民の姿を追った写真展「島々の記憶」が23日、黒部市コミュニティセンター(同市生地中区)で始まった。10月3日まで。
山田さんは、入善町に住んでいた祖父が北方領土歯舞群島にある 志発しぼつ 島で暮らしていたことから、自身のルーツを知るため2019年6月に色丹島を訪問。同年10月から1年間、県内や北海道で元島民の証言を記録し、写真に残してきた。会場には元島民の姿や風景の写真32点と、山田さんが聞き取った元島民の言葉が展示されている。
23日に開かれた講演で山田さんは「元島民の思いを知り、考えるきっかけにしてほしい。島に帰るという願いがかなう世界にいつかなれば」と語った。訪れた入善町芦崎の住職、浦田実麿さん(74)は、「戦争で弱い人たちが犠牲になった結果が領土問題。元島民の表情に哀愁や苦渋がにじみ出ている」と作品に見入っていた。
午前8時半~午後5時、入場無料。問い合わせは市企画情報課(0765・54・2115)へ。
山田さんが元島民を撮影した作品が並ぶ会場
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