登録有形文化財への登録が待たれる「陸揚庫」の総合的な調査の一環として、根室市は国後島へ延びていた海底電信線(ケーブル)の状況を把握するため、10月9日(土)に陸揚庫周辺で初めて発掘調査を実施します。
根室市が設置した北方領土対策に関する専門家会議の「根室国後間海底電信線陸揚庫の保存と活用を考える分科会」委員を務める北海道博物館の右代啓視学芸員の指導で、市民ボランティアや市職員など30名ほどで作業を行います。
発掘場所は陸揚庫のケーブル用ピットがある北側壁の直下と海岸を降りた砂地の2カ所。
海底電信線は1900年(明治33)に、根室ハッタラ浜から国後島ケラムイ崎まで38.2kmに敷設されました。1999年には、ホタテ漁の邪魔になるとして、根室湾沖の海底からケーブル1500mが引き揚げられたことがありますが、陸上での発掘調査は初めてのことです。
1945年9月1日、ソ連軍が国後島に上陸、占領。海底電信線は「その後、スパイあるいは赤化工作に利用されるおそれがあるとして、根室ケーブル庫の立ち上がりから切断し海中に棄却された」(北海道の電信電話史)とされています。
また、11日には陸揚庫の屋根と入口庇の上に生えている雑草の除去作業も行います。そのための足場が6日、組み立てられました。足場を登って初めて屋根の上を見ましたが、雑草が予想以上に繁茂していました。雑草の根元部分は一面盛り上がってコケで覆われています。
陸揚庫がいつ建設されたのか、資料は見つかっていませんが、いくつかの状況証拠から、とりあえずの建築年を1935年(昭和10)頃としています。とすると築86年です。おそらくは屋根や庇の雑草の除去も建物が建てられてから初めてではないかと思います。
作業用足場が組まれた陸揚庫
雑草が生い茂る陸揚庫の屋根
陸揚庫の屋根。海の向こうに国後島の泊山が見えた
入口の庇の上にも雑草がびっしり
陸揚庫から海岸に降りた砂地
陸揚庫の北側壁。ここを掘ればケーブルが出てくるはずです
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