北方領土の元島民らでつくる千島歯舞諸島居住者連盟(千島連盟)の根室支部は17日、根室市の納沙布岬で物故者慰霊祭を開いた。新型コロナウイルスの影響で北方領土へのビザなし渡航が2年連続で全面中止となり、墓参の機会がなくなったため初めて行った。参加者は本土最東端の岬から、祖先が眠る北方四島に向かって手を合わせた。(北海道新聞全道版2021/10/17)
強風に見舞われ、岬にある市北方領土資料館内に祭壇を設け、元島民21人を含む72人が参加した。根室支部の宮谷内(みやうち)亮一支部長(78)=国後島出身=が「(2年連続のビザなし中止で)つらい気持ちのやり場がない。古里に眠る父祖、肉親も(墓参を)どんなに待ち望んでいるかと思うと心が痛む。どうぞ安らかにお休みください」と追悼の辞を述べると、参加者は読経に合わせて1人ずつ焼香した。
その後、潮風が冷たい屋外に出て、目の前に浮かぶ歯舞群島と国後島の島影に向かって全員で合掌した。国後島にきょうだいが眠る同島出身の矢萩トクさん(83)は「みんなで手を合わせられたのはありがたい。島にもう一度行って、故郷の砂浜を踏みしめたい」と古里への思いを募らせた。
式典後、宮谷内支部長は「納沙布岬での慰霊を恒常的な行事にしてはいけない。来年は渡航を再開できるよう、政府に求めたい」と強調した。(武藤里美)
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