北方領土関連施設として初めて国の有形文化財に登録された「根室国後間海底電信線陸揚庫」を25日、施設を設置した旧逓信省をルーツにする企業の社員たちが初めて訪れた。同社によって海底ケーブルの修理記録を記した資料が現存することも分かり、逓信省、電信電話公社、NTTと約120年の時を経て、後輩となる技術者たちが先達の仕事に想像を巡らせた。(釧路新聞 2021/11/26)
来根したのは、旧逓信省をルーツにするNTTワールドエンジニアリングマリン(本社・横浜)の平林実取締役と丸島能史企画総務部長の2人。10月9日に初めて行われた陸揚庫発掘調査の報道を見て、「何か協力できることはないか」と、長崎県にある同社の「海底線資料館」を調べたところ、根室海峡ケーブルの保守日誌「根室海峡以北」を見つけた。
陸揚庫は根室と国後島をつないでいた海底ケーブルと陸上線の接続施設で、保守日誌はケーブルを敷設した1900(明治33)年からの敷設実績や故障修理を記録したもの。市役所に石垣雅敏市長を訪ねた平林さんは「紙の保存状態がよくないので、復元、装丁して(根室市に)寄贈したい」と述べ、市長も「歴史をひもとくもので大きな財産になる」と感謝した。
午後から陸揚庫を視察した2人は、現存するケーブルを見て外装鉄線が2重であること、その鉄線が密度濃く巻かれていることなどから、「海底線資料館」に残されている「アイリッシュ形特殊浅海線と同じ」であることを確認した。同形式は流氷域などに使用されるケーブルで、形式が確認されたのは初めて。
技術畑の平林さんは詳細が不明な陸揚庫についても「よく残っていたな、というのが正直な感想。海底ケーブルを敷設するだけの施設なら、ここまで大きく立派な施設はいらない。われわれの歴史でもあり、当社の電気通信の歴史を持つ関連施設を調べてみたい」と協力の意向を示した。
根室市の谷内紀夫北方領土対策監は「初めてケーブルの専門家に来てもらった。これまで浅海線であることは分かっていたが、形式が確認できた。施設の歴史も確かめられる可能性が出てきた」と喜んだ。(山本繁寿)
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