千島列島、北方領土周辺…原子力潜水艦行き交うオホーツク海 ロシア核戦略の「聖域」に

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日本の東京新聞は「ロシアはオホーツク海を『核の聖域』にした」という記事を掲載し、「ロシアがオホーツク海を利用して弾道ミサイルを搭載した原子力潜水艦潜在的な敵の攻撃から守っている」と書いている。同紙記者がカムチャツカ半島にあるロシア太平洋艦隊の原潜基地、ルィバチを取材。1990年代には荒廃していたが、プーチン大統領のイニシアチブで復活した。2000年代初頭に、プーチン大統領は原潜基地を廃止する提案を拒否したからだ。また同紙は、ロシアはオホーツク海を前哨基地として使用して国境を守っていると指摘。最新鋭の戦略核原潜「ボレイ級」2隻と巡航ミサイルを搭載する「ヤーセン級」2隻が新たに配備されると強調した。同紙は、ルィバチへの原潜配備が南クリル諸島(北方領土)の問題と何らかの形で絡み合っているのではないかと懸念している。(サハリン・クリル通信2022/1/25)

千島列島、北方領土周辺…原子力潜水艦行き交うオホーツク海 ロシア核戦略の「聖域」に (東京新聞2022/1/18)

 ロシアが、千島列島や北方領土周辺で軍備を強化している。核兵器を積んだ弾道ミサイル原子力潜水艦(SSBN)を敵の攻撃から守るためだ。日本政府が「日本固有の領土」と主張する北方領土が、ロシアの核戦略の「聖域」に組み込まれた経緯を追った。

◆「お荷物」復活させたのはプーチン大統領

 ロシア太平洋艦隊の潜水艦基地ルィバチには、ありふれた人々の営みがある。カラフルな外壁のアパート。プールやボウリング場を備えた体育館。ベビーカーを押す夫婦。

 「ロシアは国を挙げて軍人と家族の生活向上に努めている。軍人の場合は保育園での待機児童もゼロだ」。潜水艦部隊司令官ナバルスキー少将は胸を張った。

 ルィバチは今でこそ住み良さが保証されているが、ソ連崩壊から十年余は悲惨だった。冷戦終結でSSBNは「お荷物」となった。軍の規律は緩み、財政難で原潜の廃棄も相次いだ。

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 2000年代初頭、この地を反政権ジャーナリスト、アンナ・ポリトコフスカヤ氏=06年に暗殺=が訪れ、食べ物に窮してやせ細った潜水艦艦長を取材した。ポリトコフスカヤ氏は著書で「カネも名誉も将来もない街」とこき下ろし、国防の危機を憂えた。

 皮肉にもルィバチを再興させたのは、ポリトコフスカヤ氏が批判するプーチン大統領。02年に軍参謀本部が提案した潜水艦基地の廃止案を退けた。「強いロシア」を取り戻すため「太平洋で核を維持する必要があった」とロシア新聞に寄稿している。

 ルィバチには、近く最新鋭SSBN「ボレイ級」2隻と巡航ミサイルを搭載する原潜「ヤーセン級」2隻が新たに配備される。日本にとって厄介なのは北方領土問題と絡むことだ。

◆核戦争勃発した時の反撃拠点

 ルィバチを出た原潜はオホーツク海で潜航する。ロシア国営メディアによると搭載する弾道ミサイルは射程1万キロ。核戦争が勃発すれば、ロシアはここから反撃する。

 「SSBNは、核弾頭が敵に破壊されないよう海中に隠す役割もある」と語るのは、軍事評論家の小泉悠・東大専任講師。陸上に設置された弾道ミサイルと違い、ミサイルを積んで海深く航行する原潜を発見、攻撃するのは至難だからだ。

 ロシアは加えて、オホーツク海を「要塞」に見立て敵の接近を防ぐ戦略も進めてきた。堡塁となるカムチャツカ半島から北方領土までの島々にミサイルや戦車を配備すれば、オホーツク海は「核の聖域」となる。

 こうした戦略はソ連崩壊直後に採用され、30年をかけて兵力が配備されてきた。北方領土では一昨年からミサイルや戦車の導入のニュースが相次ぐが、SSBN拡充と表裏一体の問題とみられる。

 小泉氏は「日本近くの海でSSBNが行き来している事実は、意外に知られていない」と語る。

 ロシア原潜の「核の聖域」は、オホーツク海のほか北極に近いバレンツ海にもある。極寒のバレンツ海では厚い海氷が敵から原潜を守る効果があるが、近年では北極海の海氷が融解し、対策が急務となっている。(カムチャツカ地方ルィバチで、小柳悠志、写真も)

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オホーツク海に面したサハリン島南部アニワ(旧名・留多加)で敵の侵入を想定し無人機を発射する兵士

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