日ロ両政府は29日、経済や文化、スポーツなど幅広い分野で地域間交流を進める「日ロ地域・姉妹都市交流年」の開会式を札幌市白石区の札幌コンベンションセンターで開いた。コロナ禍の影響で当初予定から約1年半遅れての開催となり、両国閣僚はオンラインでの出席となった。両政府は交流年の期間を2022年末まで1年延長することで正式に合意した。(北海道新聞2022/1/29)
林芳正外相はビデオメッセージで「人と人との交流こそが信頼関係を築く基盤だ。地域交流年が日ロ関係のさらなる発展につながることを祈念する」とあいさつ。ロシアのレシェトニコフ経済発展相は「ロシアの80の州や地方が日本との経済交流を支持している。多くの事業を実現したい」とのメッセージを寄せた。
開会式には鈴木直道知事、鈴木貴子外務副大臣、ロシアのガルージン駐日ロシア大使らが出席。交流事業の実践例として、札幌ウポポ保存会のよるアイヌ古式舞踊などが披露された。
日ロ地域交流年は2019年6月、当時の安倍晋三首相とプーチン大統領が20~21年の開催で合意。日本外務省によると、これまでにオンラインを活用した映画祭など340件以上の交流行事が行われ、延べ130万人以上が参加した。(小宮実秋)
コロナで延期 規模縮小 日ロ地域交流年「困難な時こそ意味ある」
(北海道新聞2022/1/30)
札幌での日ロ地域交流年の開会式は、コロナ禍で延期を繰り返した末、大幅に規模を縮小しての開催となった。両国が北方領土問題を抱える中、幅広い分野での地域間交流を通じて相互理解を進める狙いだったが、感染拡大は続き、ウクライナ問題を巡って緊張も高まる逆風下での開催。ただ、日ロの橋渡し役を担う民間の関係者からは「地道な交流が平和につながる」と切実な声が上がった。(北海道新聞2022/1/30)
「日本の最北端に位置する北海道にとってロシアは最も近い隣人であり、大切な友人だ」。鈴木直道知事は開会式のあいさつで、札幌開催の意義を訴えた。
地域交流年は、両国の関係強化を目指し2018年に行われた「日ロ交流年」に次いで、より地域レベルの関係を深めようと、安倍晋三政権下で実施が決定。開会式はロシアと隣接し、北方領土を抱える北海道・札幌で20年5月に開催することが固まった。
しかし、コロナ禍で予定通り実施できず、水面下で模索した21年3月の開催も再び延期に。事業の中止やオンライン実施への切り替えも相次いだ。期間を22年末まで1年延長し、開会式の実施時期も探ってきたが、「もう開催するしかない状況だった」(外務省幹部)のが実情だ。
日本政府は当初、両国の閣僚や知事、経済界も参加する大規模な開会式や関連イベントの実施を目指したが、感染対策のため、道外からの出席は一部に限定。ロシア本国からの参加もなく、オンラインでメッセージを送る形にとどまった。
両政府は開会式を契機に改めて交流に弾みをつけたい考えだが、コロナ禍の収束は見通せず、米ロが対立するウクライナ情勢は、日本外務省が在ウクライナの日本大使館員家族の帰国を促すまでに悪化。領土交渉も行き詰まっており、交流の機運は高まっていない。
ただ、交流年の認定事業になった、06年から続く「ロシア文化フェスティバル」の長塚英雄・日本組織委員会事務局長は「難しい状況の時こそ交流を続ける意味がある」と強調。ロシア国立モイセーエフ・バレエ団の27年ぶりの日本公演を目指し、関係者と「支える会」を発足させるなど、奔走している。(文基祐)
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