全ロシア海洋漁業研究所ヴニロ太平洋支部チンロは、2021年の表層漁業のレヴューを概説、今後の資源状況の見通しを発表し、イワシ・サバ操業については、着業隻数を増加して生産量を拡大させることが可能であり、このことによる資源への悪影響は特段存在しない旨の観測を示した。(ロシア漁業ニュースヘッドライン2022/1/28)
チンロによると、2020年と2021年は、極東海域のイワシ・サバ漁業にとって環境に類似性があり、全体として温暖で、特に2020年の春はそれが顕著だった。
2021年春、イワシ・サバ資源の北上が遅れていたが、調査により6月には南クリール海域で当該資源の大きな広がりが確認され、7月-8月には北部東方のカムチャツカ沖合で魚群が形成された。
2021年8月のクリール諸島海域でのトロール調査では、資源量がイワシ380万トン、サバ120万トンと算定され、これは、2020年の数値を上回るものとなった。
また、これらの資源の分布の広がりはベーリング海とオホーツク海での調査結果でも裏付けがされた。
ロシアのイワシ・サバ漁業が再開された2016年、当該操業期間は3ケ月間-4ケ月間だったが、2020年-2021年には日本EEZを含めほぼ周年となった。
政府間協定に基づく日本EEZ操業は1月から開始され、越冬するサバ資源の密度は濃く、2020年には1隻、2021年には3隻が着業した。
ただし、イワシ・サバ資源の移動には重要な違いがあり、2020年は11月に日本EEZへ向かったが、2021年については12月後半となった。
2020年、ロシア漁業者のイワシ漁獲量は31万5,000トンに達したが、それを受け入れるだけのマーケットは用意されていなかった。また、同年のサバ漁獲量は比較的少なかった。
この結果、2021年は、イワシへの興味が薄れサバへの関心が強まったが、サバの漁獲量がそれほど大きくないことから、着業隻数が大幅に減少したことにより漁獲量が低下したとチンロは指摘、一方で双方ともに単位当たりの漁獲効率が高くなったことを特に加えている。
2021年のイワシ漁獲量は25万3,000トンにとどまっているが、これは、単純に着業隻数が少なかっただけであり、増隻すれば、2022年はこれを超え、サバも2018年が最大漁獲量となっているものの、着業隻数が多くなれば、この記録を超える可能性がある。
チンロは、イワシについては1980年代に資源量が1,000万トン以上と評価されていたが、現在は300万トン-400万トンレヴェルであり、今後、相応に増加し、一方、サバは1980年代300万トンレヴェルだったが、現在約700万トンと算定されており、おそらくこれがピーク水準で、今後、増加、減少の双方の可能性があるとの予想を示した。
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