日本政府がロシア軍のウクライナ侵攻を受け、先進7カ国(G7)で連帯して追加の対ロ制裁に踏み切ったことで、北方領土交渉の停滞の長期化は避けられなくなった。岸田文雄首相は25日、領土交渉は当面困難との認識を表明。与野党からは北方四島で具体化を目指す日ロ共同経済活動など、安倍晋三政権下で始まった経済協力の見直しを求める声が強まる。一方のロシア側は対抗措置を取る考えを示し、対立が激化する可能性がある。(北海道新聞2022/2/25)
「国際社会の秩序に関わる大変重要な事態が発生した今、当面は北方領土問題について論じることは控えなければならない」。首相は25日の参院予算委員会で、ロシアのウクライナ侵攻を受け、こう語った。
首相はこれに先立つ同日朝の記者会見で、追加の対ロ制裁を発表。ロシアに厳しい姿勢で臨む考えを強調した。
日本は安倍政権下の2014年にロシアがウクライナ南部クリミア半島を一方的に編入した際、領土交渉への影響を懸念し、協調する欧米に比べ軽微な制裁にとどめた。ただ、現在は交渉が行き詰まっている上、ロシアによる一方的な現状変更を許せば、中国の海洋進出を勢いづけるとの懸念が強まっている。首相は24日夜のG7首脳テレビ会議で「ロシアの行動に適切に対処することは、他の国々に誤った教訓を残さないためにも必要だ」と述べた。
与野党内でも対ロ強硬論が急速に勢いを増す。25日の自民党の会合では、四島での日ロ共同経済活動と、萩生田光一経済産業相が兼務する「ロシア経済分野協力担当相」ポストがやり玉に上がった。
佐藤正久外交部会長は「片方で強い制裁をして片方で経済協力を続けたら、西側諸国は日本を信用しない」と述べ、政府に見直しを要求。同日の参院予算委でも野党側からポストの廃止要求が相次いだ。
共同経済活動や経済協力担当相は、領土交渉の進展に向けて安倍政権下で始まったものだ。首相は25日、共同経済活動について「現時点で予断することは控えたい」と述べるにとどめたが、仮に見直せば安倍氏が進めた路線の転換につながる可能性もある。
対ロ強硬論が強まる中、政府内からは「どんな状況でも対話のチャンネルは閉ざすべきではない」との声も漏れる。一方、ロシアのガルージン駐日大使は25日、外国特派員協会で記者会見し、日本の対ロ制裁について「重大な対抗措置」を取ると警告した。(文基祐、関口潤)
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