ウクライナに侵攻したロシアへの経済制裁として、日米欧が国際決済ネットワーク「国際銀行間通信協会(SWIFT)」からロシアの一部銀行を排除する方針を表明したことで、函館の水産関連業者が影響を懸念している。加工原料や小売店に並ぶカニやイカ、サケ、魚卵などの多くがロシアからの輸入品だからだ。決済ができなくなり、輸入が滞れば死活問題となるだけに、各事業者は状況を注視している。(北海道新聞函館道南版2022/3/2)
「北海道とロシアの関係は密接で大きい。コロナだけでも大変なのに、輸入が止まればさらに厳しい状況になる」。函館朝市で海産物店を営む函館カネニの藤田公人社長は、現状を心配そうに語る。
同店で扱うカニ類はもとより、サケやエビ、それにイクラなどの魚卵の多くはロシアからの輸入品だ。この時期はウニもロシア産となっている。現時点では店頭在庫が十分あり、当面の間は影響がないという。同社は直接輸入を手がけているわけではないが、「輸入商社などが対応を検討していると思う」という。
北斗市で水産加工品製造・販売を手がけるトナミ食品工業は、年400トンほどのロシア産イカを加工。利波英樹社長は「国産のイカが取れなくなって原料をロシア産にシフトした経緯があり、ほかに代替ができない。もし、ロシアからの輸入が止まれば大変なことになる」と危惧する。今年分の加工原料は確保済みで、現時点で影響はない。ただ、水産加工業界ではイカ以外にも長年ロシアからの輸入に頼る加工原料は多く、「早く解決してほしいが、今は見守るしかない」と語った。
朝食にイクラの食べ放題を提供するホテルセンチュリーマリーナ函館も、「今年秋まで提供できる量のイクラを確保済みだが、経済制裁が長引けば影響が出かねない」と、事態の長期化を心配している。
また、日本貿易振興機構(ジェトロ)函館相談窓口によると、札幌の北海道事務所には事業者からロシア側との決済についての相談が寄せられている。同窓口は「今のところ函館・道南の事業者からの相談はないが、今後影響が広がる可能性があり、相談があればしっかり対応したい」としている。(米林千晴
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