ロシア外務省は21日、ロシアのウクライナ侵攻を理由に対ロ制裁を科した日本への対抗措置として、北方領土問題を含む平和条約締結交渉を拒否する方針を表明した。元島民らが北方領土を訪れるビザなし交流や自由訪問を停止し、北方四島での日ロ共同経済活動の協議から離脱することも発表。ウクライナ情勢を巡る日本の対応が「非友好的」だとし、「すべての責任は日本にある」と一方的に主張した。(北海道新聞夕刊2022/3/22)
岸田文雄首相はウクライナ侵攻を「歴史に刻むべき非道な行為」と強く非難。「ロシアとの関係をこれまで通りにしていくことは、もはやできない」との認識も示していたが、ロシア側の一方的な通告で関係の悪化は決定的となった。
ロシア外務省は声明で「現状では日本と平和条約に関する交渉を続けるつもりはない」と表明。「(ロシアに対して)公然と非友好的な立場を取り、わが国の利益を損なおうとする国と、2国間関係に関する基本文書の調印を協議することは不可能だ」と強調した。
ビザなし渡航については、1991年に両国が制度創設に合意した日本人とロシア人島民が相互往来するビザなし交流、99年に始まった元島民らが古里を訪れる自由訪問を停止すると発表した。ただ声明の中では、元島民らの北方領土墓参には触れなかった。
日本政府はウクライナ侵攻を受け、ロシアの政府関係者や金融機関の資産凍結、貿易上の優遇措置「最恵国待遇」の撤回など、欧米と協調した対ロ制裁を決めた。ロシア外務省は一連の対抗措置について「互恵的な協力や善隣関係の発展よりも、反ロシアの道を意図的に選んだ日本にすべての責任がある」と批判した。
歯舞群島、色丹島、国後島、択捉島からなる北方四島は45年、日ソ中立条約を無視して侵攻した旧ソ連に占領された。56年の日ソ共同宣言で、平和条約締結後に歯舞、色丹2島を日本に引き渡すことが明記されたが、日本は四島返還を求め、旧ソ連崩壊後は継承国ロシアとの間で交渉が続いてきた。
日ロ両政府は2018年11月のシンガポールでの首脳会談で日ソ共同宣言を基礎に平和条約交渉を加速することで合意。当時の安倍晋三首相は同宣言に明記された歯舞、色丹2島の返還を軸とした方針に転換したが、交渉は行き詰まった。
岸田首相は、ロシアによるウクライナ侵攻後、北方領土が「不法占拠されている」と明言するなど、日本の原則的な立場に回帰する姿勢を強めていた。(渡辺玲男)
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