全国の中学生による2021年度の北方領土スピーチコンテストで、光洋中3年だった近藤妃香(ひめか)さん(15)=現根室高1年=の「四島(しま)の架け橋」が最高賞に次ぐ内閣府北方対策本部審議官賞に選ばれた。国後島出身で市内在住の曽祖母西舘トミエさん(85)への取材を基に原稿を執筆。「ひいばあのような、つらい思いをする人がもう現れてほしくない」と、領土問題の平和的解決のために自身が力になると訴えた。(北海道新聞根室版2022/4/8)
■「ひいばあのように故郷追われる人、もう現れてほしくない」
コンテストは北方領土問題対策協会が主催し、21年度は6184点の応募があった。動画による審査を経て、3月中旬に北海道・東北で唯一の入賞を勝ち取った。
近藤さんは中学1年の時、市内の弁論大会に出場するため、8歳まで島で暮らした曽祖母から島の様子を聞き取った。
季節によって景色を変える爺々(ちゃちゃ)岳の麓で暮らした楽しい毎日。突然の旧ソ連の侵攻で、「殺されそうになったら自決しよう」と父から言われ、死を覚悟した記憶。「島から出ていけ」と怒鳴るソ連兵も、日本人に礼儀正しく接した兵隊もいたこと―。近藤さんは「今まで知らなかったことや、想像と異なることばかりで、私が記録に残さないといけないと思った」と、何度も曽祖母の家に足を運び、メモを片手に話を聞いた。西舘さんも「島のことを知りたいと思ってくれてうれしい」と快く協力した。
近藤さんは聞き取りを基に作文を執筆し、道の作文コンテストでは中学1年で佳作、中学3年で最優秀賞を受賞した。集大成となるスピーチコンテストでは、曽祖母に聞いた島の記憶や若い世代の領土問題への啓発について、感情表現や声の抑揚に注意して発表。「平和に北方領土問題が解決されることを願い、私が『四島の架け橋』となりたい」と締めくくった。
近藤さんはロシアによるウクライナ侵攻のニュースを見て、曽祖母のように故郷を追われる人が現代にもいると改めて実感した。「領土問題は教科書の中の出来事ではない。今だからこそ、元島民の経験や思いを伝えたい」。近藤さんのスピーチは、北方領土問題対策協会のユーチューブから視聴できる。(武藤里美)
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