<今日の話題>(北海道新聞夕刊2022/5/17)
ロシアの侵攻を受けるウクライナに、武器類の迅速な貸与を可能にする武器貸与(レンドリース)法が先週米国で成立した。
第2次世界大戦時にも同様の法律があった。
米国はそれに基づき、ナチス・ドイツ相手に苦戦する英国やソ連などに大量の軍需物資を供給し、連合国側は劣勢を挽回した。
米国の支援はさらに続く。
1945年2月のヤルタ会談でソ連の対日参戦が決まると、米国は大量の艦船をソ連に無償貸与し、アラスカに1万人以上のソ連兵を集めた訓練も行った。
「プロジェクト・フラ」と呼ばれる米ソ合同の極秘作戦である。
樺太南部と千島列島の占領には、そのソ連兵たちと米国貸与の艦船が投入された。
このように歴史を動かした軍事支援の仕組みが復活する。
埋もれていた米ソ極秘作戦の事実は、根室振興局が2015年度から3年間行った北方領土遺産発掘・継承事業で明らかにされた。
根室振興局副局長として調査を取りまとめ、今は根室市北方領土対策監を務める谷内紀夫さん(64)は「かつては米国がソ連に勝ってもらおうとしてやったことが、今度はその継承国のロシアを勝たせないために行われる。皮肉なことだ」と話す。
まさに繰り返される歴史のらせんを見る思いがする。
武器貸与法が威力を示した1941~45年は、戦火が世界に拡大した時期に重なる。その歴史を繰り返してはならないことは、言うまでもない。(相内亮)
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