四島洋上慰霊7月から 千島連盟、根室発2航路10回 首相、支援を表明

 北方領土の元島民らでつくる千島歯舞諸島居住者連盟(千島連盟、札幌)が検討している「洋上慰霊」の概要が2日、分かった。7月下旬から8月上旬にかけ、国後島歯舞群島方面の2航路に分けて計10回程度実施し、日ロ中間ラインの手前で慰霊する。ロシアのウクライナ侵攻を受け、政府がビザなし渡航事業の当面見送りを決めたことを受けた措置。岸田文雄首相は同日、鈴木直道知事らと官邸で面会し、国として支援していく考えを示した。(北海道新聞2022/6/3)

 計画では、洋上慰霊は2航路とも日帰りで根室市根室港を発着点とする。ビザなし渡航に使っているチャーター船「えとぴりか」(1124トン)で中間ラインの北海道本土側を航行し、元島民らが島を望みながら船上で先祖を供養することを検討している。

 夏は海が荒れにくい上、学校が夏休みに入り、若い世代の後継者が参加しやすいと判断した。

 新型コロナウイルス対策として、出発前に参加者にPCR検査を求める予定で、6月下旬にも参加者の募集を始める。

 政府は4月下旬、ロシアとの関係悪化を受け、墓参事業も含めた北方四島へのビザなし渡航事業を当面見送ると発表。これを受け、道や千島連盟が代替策として、洋上慰霊の実施に向けた検討を進めていた。

 首相との面会には、知事のほか千島連盟の脇紀美夫理事長らが出席し、《1》領土返還に向けた交渉継続《2》ビザなし渡航の早期再開《3》代替事業の支援《4》四島内に共同慰霊碑の設置を含む「墓地公園」を整備―などを要望。首相は冒頭、四島交流事業の中断を受け「政府として必要な措置を実施してきたい」と述べた。

 知事によると、首相から具体的な事業への言及はなかったが「声をしっかり受け止め、何ができるか考える」と説明したという。

 コロナ禍で、ビザなし渡航が中止となった昨年は、千島連盟羅臼支部根室管内羅臼町、同連盟別海町支部がそれぞれ10月、独自に洋上慰霊を行った。(敦沢政俊、武藤里美)

 

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