樺太での国際交流、育英館大が映像作品に 日本人と旧ソ連人、同居通じ心通わせる

稚内育英館大(旧稚内北星学園大)は樺太(ロシア・サハリン)の終戦後の歴史をたどる映像作品「わが家にソ連人がやってきた」を制作した。日本人と旧ソ連人が一つの家に住む奇妙な共同生活「混住」を通じ、民族を超えて心を開いた史実を紹介する作品。学生らは「戦争に翻弄(ほんろう)されながらも、国際交流をした人がいた歴史を知ってほしい」と話している。(北海道新聞留萌宗谷版2022/6/9)

わが家にソ連人がやってきた【2021年作品】 – YouTube

 育英館大が2014年から引き揚げ者の証言を集める「樺太プロジェクト」の第7弾。牧野竜二非常勤講師(38)の指導の下、川原聡真さん(21)、金谷拓実さん(21)、須藤雅愛(まいと)さん(22)、丹野亜優さん(20)が取材や編集を行い、約30分の作品にまとめた。

 作品は特定の国や民族を差別するインターネットの投稿から始まる。ベースとなるのは、ソ連樺太侵攻後、現地に留め置かれた日本人家族が、自宅に押しかけたソ連人らと共同生活を送るうちに互いに打ち解けていく様子を描いた演劇「フレップの花、咲く頃に」(2020年10月)の稚内公演の映像だ。

 学生が稚内や札幌の引き揚げ者らを取材し、「いじめられるのを助けてくれ、ソ連人夫婦が自分の子どものようにかわいがってくれた」などの証言や史料で肉付けし、混住の中で本当の家族のように互いに心を通わせた史実に光を当てた。

 取材で初めて引き揚げ者に会ったという川原さんは「国と国が問題を抱えていても、同じ人間同士には分かり合える瞬間があるのだと知り、驚いた」と取材を振り返った。

 稚内を巡っては、ロシアによるウクライナ侵攻後、国会議員が、市内のロシア語表記がある道路標識を問題視したツイートを投稿し、波紋を広げた。

 牧野非常勤講師は「この時期の公開には正直怖さもあるが、過去の歴史を知ることを妨げてはならない。国境のまち・稚内から(引き揚げられなかった日本人がソ連人と家族のように仲良く暮らした混住の一面を)発信することは非常に重要」と力を込める。

 作品は育英館大のユーチューブチャンネルで公開している。(高橋広椰)

映像作品「わが家にソ連人がやってきた」を制作した牧野非常勤講師(右)ら樺太プロジェクトのメンバー

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