ロシア産業企業家同盟(アレクサンドル・ショーヒン)は投資目的の漁獲割当の設定について、業界としての意見書をロシア大統領府長官アントン・ワイノに送付し、この問題の検討を促した。同連盟には漁業部会が設置されており、主に、全ロシア漁業者水産物輸出者協会ヴァルペ会長ゲルマン・ズベレフがその部会長を務めている。ロシア農業省が、新たな漁獲割当として、“投資クオータ”第2弾、カニ漁獲割当オークション第2弾、そして投資目的の市場価値の高い魚種のオークションを設定する方針を示し、ロシア漁業庁長官シェスタコフは、先に行われた第25回サンクトペテルブルグ国際経済フォーラムにおいて、投資目的漁獲割当第2弾の設定に言及し、当該プロジェクトの開始を2025年としたい旨の意向を表明、そのためには2023年内に関連法令を施行する必要があると指摘した。
これに対し、業界は、第2弾の設定を急ぐ必要性を共有せず、これを支持しないことを確認、特に“投資クオータ”第1弾の造船プロジェクトが、いまだに計画の10%しか達成されていないことを強く指摘し、延期するべきであることで意見の一致をみている。
また“投資クオータ”の第2弾の実施で、スケトウダラとニシンのロット・パッケージの内容が違う”投資クオータ”第1弾の参加者の漁獲割当が削減されてしまう可能性があることから、更に4%がこの補償調整向けとして配分されることとなっているが、第1弾の申請受付が開始された2018年当時よりTACは増加し、アクチュアルな配分数量も連動して2021年に7%増加しており、過去の漁獲実績に基づく“歴史的原則”の配分と比較しても、その補償を行うことの根拠が乏しいことから、これを不要とする判断を促すことで合意がとられている。
カニの漁獲割当配分については、2018年に向う15年間の資源利用契約を漁業者と政府が締結したにもかかわらず、それに反し、漁獲割当オークションの第1弾が行われた経緯があり、更に2弾を設定することは、不合理で、これについては2033年の契約の満了後にすべきであること、加えて、ホタテ、ツブ、ナマコ、ウニ等、市場価値の高い資源の採捕割当を100%オークションで配分することについては、社会的、経済的影響を考慮し、これに支持しないことで意見の一致をみている。
ロシア産業企業家同盟
(Российский союз промышленников и предпринимателей, РСПП)
ロシアの企業家、実業家による公共組織。ソビエト連邦末期の1991年に産業界の首脳を集めて組織された。 日本の経団連に相当。会員企業は100以上の団体、32万以上の企業から構成され、国内総生産の60%を占める。
アントン・ワイノ(Антон Эдуардович Вайно)
1996年モスクワ国際関係大学を卒業し、国際関係の学位を取得する。外務省入省後は東京の駐日ロシア大使館に勤務した後、本省に戻り第二アジア局勤務。2002年ロシア大統領府儀典局に勤務、後に儀典・予定局(儀典・組織局)副局長、2007年には第一副局長を務める。2008年ロシア連邦政府官房副長官を経て、首相府儀典局長兼官房副長官。2011年ロシア連邦大臣兼内閣官房長官。2012年5月22日から、大統領府副長官。 2016年8月12日、大統領府長官のセルゲイ・イワノフが事実上解任されたことを受け、昇格する形で後任の長官に就任した。駐日ロシア大使館に勤務した経験から日本語が堪能。
(ロシア漁業ニュースヘッドライン2022/6/28)
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