ロシア下院議員ミハイル・マトヴェーエフ(ロシア共産党)は、ノルウエーがロシア企業によるスピッツベルゲンへの貨物輸送を妨げていることを受け、ノルウエーとのバレンツ海境界線画定条約破棄を提起、同院議長ヴャチェスラフ・ボロディンもこれを支持し、外交委員会で検討するよう指示した。
ロシアとノルウエーは 40年間にわたりバレンツ海の境界線をめぐり対立してきたが、2010年9月、“バレンツ海と北氷洋における海域画定と協力に関する条約”に調印し、これを終えた形となり、それまでの係争海域の面積をほぼ等分することで妥協を成立させている。
スヴァーバル諸島に関しては、1920年のスヴァーバル条約によって漁業・鉱工業・商業その他の活動に関する各締約国の自由かつ平等な権利が保障されたが、ノルウエーはこの権利が同諸島から200海里の排他的経済水域(EEZ)には適用されないと主張し、両国の漁業管理権に関する対立が続いていた経緯がある。
2010年の海域確定条約では、両国の漁業に否定的な影響を与えてはならず、この海域の水棲生物資源の保護・管理と利用に関する緊密な協力を続けていくこととされており、特に付属書で、1975年と1976年に締結された2つの漁業協力協定が、先の15年間有効であることなどが規定されている。
ただし、取扱いに不安を感じたロシア漁業界は、2010年-2011年の批准までの間、否定的な反応を示した。条約批准直後の2011年、ノルウエー沿岸警備隊によるロシア漁船の拘束事件も増加した。
条約破棄の提起に対しノルウエー外交当局は、当該条約に終了条項はなく、言ってみれば、無期限に有効だと指摘している。
これに対し、ロシア外務省報道官マリア・ザハロワは、一方的な制裁、資産の窃盗、外国人排除を行う欧米に追従する国に、国際法がまだ存在するのかと皮肉り、SNS上で批判を行った。
なお、先にロシア漁業庁長官イリヤ・シェスタコフは、ウクライナ事情に関する制裁措置発動後も、日本とノルウエーとの漁業協力の発展の重要性を指摘し、ノルウェー水産海洋大臣BjørnarSkjæranも、最も重要なのは、漁業分野の協力を維持し、水棲生物資源の持続的利用を確保することだと表明している。(ロシア漁業ニュースヘッドライン2022/7/7)
コメント