「墓参に代わるものではない」洋上慰霊終了で知事 「ビザなし」再開要求へ

 根室港発着の北方四島洋上慰霊は10日、全10回の日程を終えた。鈴木直道知事はこれに先立ち、9日の記者会見で洋上慰霊について「墓参に代わるものではない」と述べ、当面見送りとなったビザなし渡航の再開を政府に求める考えを示した。洋上慰霊に対する元島民の複雑な思いを反映した発言だが、日ロ関係悪化の中でどう実現を図るか、難題も浮き彫りになった。(北海道新聞2022/8/11)

 洋上慰霊はロシアによるウクライナ侵攻の影響で北方四島への訪問事業が難しくなったことから、7月23日から8月10日まで実施。元島民や関係者からは島への接近を喜ぶ声があった一方、「人道的な観点から、上陸しての墓参を可能にして」という声も相次いだ。

 知事は「元島民の方は(洋上慰霊だけでなく)北方四島の交流等事業(ビザなし渡航)を切望している。いち早く再開できるよう国に求めたい」と述べた。一方、政府側は日ロ関係が改善しない限り、来年以降も洋上慰霊を続ける方針を示しており、元島民の一部から不満も出ている。

 今回の出航予定全10回のうち悪天候のため、2回は出航を取りやめ、1回は途中で引き返した。全国から集まった元島民らは根室港や付近の海上の船内で慰霊行事に参加したが、北方領土が見える陸上での代替プログラムを求める声もあった。

 期間中、全国で新型コロナウイルスの感染が拡大。ただ、事務局役の道は感染が判明し乗船を中止した人の数を明らかにせず、参加者の安全安心を重視した対応に課題が残った。(松本創一、武藤里美)

 

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