ロシア政府は5日、北方領土ビザなし渡航のうち、日本人とロシア人島民が相互訪問するビザなし交流と、元島民と家族が古里を訪ねる自由訪問について、日本との合意を一方的に破棄するとの政令を発表した。ウクライナ侵攻を理由に対ロ制裁を科した日本への対抗措置。30年続いてきた合意が失われたことで、北方四島との交流事業の再開は極めて困難になった。日本政府は6日、外交ルートを通じてロシア側に抗議。岸田文雄首相は同日、官邸で記者団に「極めて不当であり、断じて受け入れることができない」と述べた。(北海道新聞2022/9/7)
政令はミシュスチン首相が3日付で署名。ビザなし渡航のうち、ビザなし交流と自由訪問に関する日本との合意を失効させるとし、6日中にも日本政府に通告される見通し。一方、ビザなし渡航のうち、元島民らの北方領土墓参に関する合意は破棄しなかった。
ロシア外務省は3月下旬に発表した声明で、対ロ制裁を科した日本に対し、北方領土問題を含む平和条約締結交渉の継続を拒否したほか、ビザなし交流と自由訪問の実施を停止すると発表。今回の政令はロシアが国内の手続きに基づいて日本側との合意から離脱し、事業の枠組み自体の解消を正式に決定した形だ。
ビザなし交流は、両国の相互理解の増進を図り、領土問題の解決に寄与することを目的に、主権問題を棚上げする形で1992年に開始。日本側からは元島民や返還運動関係者が参加してきた。自由訪問は、元島民への人道的見地から99年に始まった。
日本政府は4月、ロシアのウクライナ侵攻を受け、墓参を含めたビザなし渡航の実施を当面見送る方針を発表しているが、今回のロシア政府の決定で日ロ関係のさらなる悪化は必至だ。首相は6日、日本の対ロ制裁はロシア側に原因があると主張し、「四島交流事業を行う状況にはなく、このような対応を取らざるを得ない」と述べた。(渡辺玲男)
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