根室市は13日、終戦直後まで根室と北方領土・国後島をつないだ通信用海底ケーブルの中継施設「根室国後間海底電信線陸揚(りくあげ)施設(陸揚庫)」=同市西浜町=について、保存方法を検討するための詳細な調査を始めた。調査を基に現状のまま保存するか、約90年前の建設当時の状態に復元するかなどの具体的な議論を年内にも始める見通し。(北海道新聞2022/9/14)
陸揚庫は1935年(昭和10年)ごろ建築されたとみられ、鉄筋コンクリート造平屋建てで床面積約20平方メートル。ケーブルは床の開口部から38キロ先の国後島南部、さらに択捉島最北部まで500キロ以上をつなぎ、旧ソ連軍の北方領土侵攻を伝える際にも使われた。昨年10月に北方領土関連の建造物として初めて国の登録有形文化財になった。
調査は劣化や耐震強度などを調べるのが目的。初日は建物のコンクリートの一部をくりぬいたり、建物の周囲を掘削して基礎の現状を確認した。15日まで電磁波探査機などを使い、建物に入っている鉄筋の程度なども確認する。
市は調査データなどを基に、どんな保存方法が適当なのか専門家による会議で議論し、年度内をめどに方向性を示す。会議の委員で国土交通省国土技術政策総合研究所の長谷川直司シニアフェローは「北方領土とのつながりを示す本土側唯一の施設。どんな方法が良いか地元の識者とも検討したい」と述べた。(武藤里美)
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