根室「陸揚庫」門の扉止め? 市発掘調査で石や鉄のかたまり発見  使用当時知る手がかりに

 根室市が13日に本格化させた、終戦直後まで根室北方領土国後島をつないだ海底通信線の中継施設「根室国後間海底電信線陸揚(りくあげ)施設(陸揚庫)」の発掘などの調査で、門の扉止めにあたる「戸当たり石」2点や門の扉に使われていた可能性がある鉄のかたまりが見つかった。陸揚庫が使われた当時の様子は不明な部分が多く、過去の姿を知る手がかりになりそうだ。(北海道新聞根室版2022/9/14)

 陸揚庫の発掘などの調査は昨年10月に続き2回目。今回は現施設の前身として、通信線が開通した1900年(明治33年)当時にあった可能性のある施設の遺構を探すため、周辺を1メートル掘り下げ調べている。

 発掘では、施設正面前の二つのコンクリート製の門柱の近くにそれぞれ、門の扉が開き過ぎないようにストッパーの役目をしたとみられる「戸当たり石」を確認。さらに門の扉の一部とも推測できる長さ数十センチほどの棒状の鉄のかたまり1点を見つけた。建物東側の地中からは、れんがのブロックや破片約20個が出土した。

 市北方領土対策課は「門には扉があった可能性が高くなり、かつて建物を囲う塀や柵などがあったことも推測される」と指摘。市職員らは塀や柵の痕跡を探すため、門柱近くの地表を手作業で掘って確認した。調査は15日まで続く。

 陸揚庫は鉄筋コンクリート造平屋建て。旧逓信省が敷設した海底通信線を引き揚げるための施設で、35年(昭和10年)ごろの建築とされる。昨年10月、北方領土関連の建物としては初めて国の登録有形文化財となった。(武藤里美)

■歴史継承、今こそ重要 北海道博物館・右代学芸員に聞く

 陸揚庫の発掘調査を指導している北海道博物館の右代啓視(ひろし)学芸員に、今回の発見や調査の意義を聞いた。

 ――今回の調査は今後、どのような意義を持ちますか。

 「陸揚庫の調査は地道ですが、当時を知る上で必要な作業です。ビザなし渡航が途絶えている今、四島の歴史や文化が継承されるか、途絶えてしまうかの大事な時期になっています。建物を保存し、歴史を掘り起こすのがこれまで以上に重要になります」

 ――事前の掘削で、門柱の後ろから「戸当たり石」が見つかりました。

 「戸当たり石は明治時代から昭和初期の行政関係の建物に多く見られました。貴重な鉄の代わりに石を活用していた、当時の生活様式が垣間見えます。また、戸がついているということは、建物を囲うものがあったはずです」

 ――れんがや鉄のかたまりも見つかりました。

 「れんがについては、1900年(明治33年)の海底通信線開通時のものとしては新しいものが混ざっています。鉄のかたまりについても、よく調べて全体の中で位置づける必要があります」

 

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