樺太連盟の会報誌をデータベース化 釧路公立大・中山准教授 853号分記事目録「思い伝わる貴重な情報」

 釧路公立大の中山大将(たいしょう)准教授(42)=サハリン樺太史=が、昨年3月に解散した全国樺太連盟の会報誌「樺連(かばれん)情報」の記事目録のデータベース化に取り組んでいる。70年以上続いた会報には樺太出身者の望郷の思いや戦後の援護の記録などが掲載され、中山准教授は「『樺連情報』は樺太について知るための宝の山。歴史に触れる入り口として活用してほしい」と話す。(北海道新聞2022/9/15)

 同連盟は、樺太からの引き揚げ者援護を目的に1948年に設立され、高齢化で昨年3月末で解散した。「樺連情報」は48年に創刊された会報が前身。4ページで横約27センチ、縦約40センチ。発行は月1回で、会員や地方自治体などに発送していた。同連盟解散後も財務上の精算が終了するまで続き、今年6月30日に「結了版」として出た853号が最終号。道立図書館では第1号から閲覧できる。

 中山准教授は別の研究者が90年代後半発行分まで終えていたデータベース化作業を2020年度に引き継いだ。大学院生とともに残りの作業を進め、中山准教授が以前に教壇に立っていた京都大東南アジア地域研究所のホームページで本年度中に、これまで出された会報の記事の見出しと執筆者名を無料で公開する。

 「樺連情報」には、引き揚げ者が故郷の思い出や旧ソ連軍の樺太侵攻についてつづった手記、各地の同窓会の様子などを掲載。俳優の故岡田嘉子さんが1938年に演出家とともに樺太の国境を越え旧ソ連領に駆け落ちした「恋の樺太逃避行」を知る人の随想も収録した。奨学金学生寮など引き揚げ者を対象にした援護制度情報も載せていた。

 同連盟理事を務めた樺太出身で釧路市の岩崎守男さん(85)は「南樺太が日本領だったのは40年間だったが、連盟は70年以上続いた。長く活動できたのは出身者が故郷を思い続けてきたから。『樺連情報』からは一人一人の歴史や思いが伝わってくる」と話す。中山准教授は「樺太に関する貴重な情報が多く記されている」とデータベースの活用を呼びかける。(今井裕紀)

 

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