返還への活動つなぐ 島民2世の印刷会社社長・舘下雅志さん(63)=中標津町=<四島よ私たちの願い 日ロ交渉停止>10

 「本年度の北方領土ネット検定は合格者104人。アクセス者は344人。まずまずですね」–中標津町で印刷会社を営む舘下雅志さん(63)は千島歯舞諸島居住者連盟(千島連盟)の中標津支部長。国後島民2世として連盟の青年部活動を経て昨年、支部長に就いた。運動に関わる人を増やし、活動をつなぐことに力を入れている。(北海道新聞根室版2022/10/14)

 1992年のビザなし渡航で、病気で遠出できない母京子さんに代わって国後の土を踏んだ。「手つかずの自然とロシア人島民たちの純朴さに心動かされた」といい、青年部活動に入れ込むようになった。

 島に暮らした人たちは時の経過と共に減っていく。母も2012年に78歳で世を去った。「署名活動だけでなく、若い人からも関心を集める方法はないか」と新しい事業を思案した。

 最初に考えた、島の地名を読み上げて楽しむ北方領土ビンゴゲームは、集会や子供向け行事で好評だ。ネット検定は09年に始め今年6回目。四島のシミュレーション飛行映像も作った。「連盟支部の2世仲間は商工会仲間でもある。メンバーで知恵を絞っています」

 島を訪れ、日本人と現島民の「共住」の可能性を探る対話集会も06年から5年かけて重ねた。教育、経済、医療など社会システム、共住社会に向けたアプローチについて提言した。

 ただ、現在はロシア人島民と直接触れ合う機会は途絶えている。「これからは3世だけの会議も開けるようにしたい。今ここでできるのは活動を切らさないこと」。日ロのパイプが限られる中、返還への道を探り続けている。(川原田浩康)

 

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