根室市に住む白﨑ヨシエさんは今年、100歳。生まれ故郷の国後島古釜布に関する資料や戦前の地図を手にすると、食い入るように見つめ、80年近く前の記憶を語った。(北海道新聞根室版2022/11/23)
「戦前、古釜布尋常高等小学校の近くに住んでいて、戦後はロシア人が近所にやってきた。女同士でよく顔を合わせ、ズトラーストヴィーチェ(こんにちは)、スパシーバ(ありがとう)ってロシア語も教えてもらったんだ」
1945年の終戦後、北方領土への旧ソ連軍侵攻から日本人の退去までの数年。ロシア人と日本人は島内で混在し、地域では助け合いの暮らしがあった。
幼い長男を抱えた白﨑さんは、生活に必要な砂糖や塩などをロシア人からもらい、もんぺや暖かい服などをロシア人に贈った。「ロシア人は、人間的にとても優しい人たちだった」と振り返る。
ロシア人との共生は長くは続かなかった。白﨑さんは長男を連れ、実家の親族と一緒に樺太経由で引き上げた。戦時中に従軍して国後を離れた夫とは、根室で再会。酪農で生計を立てた。その後、ビザなし渡航で国後に3回訪れた。
今年ロシアがウクライナに侵攻し、日ロ関係が悪化した。島での体験を元にこう語る。「戦後の暮らしは日本人もロシア人も苦しかったけど、一緒にしゃべって仲良くなった。あのロシア人、今、何をしているだろう。会いたいね」(松本創一)
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