旬を迎えた北方四島産のエゾバフンウニの価格が高騰している。円安による仕入れ価格の上昇に加え、新型コロナウイルス禍で落ち込んでいた観光客が持ち直し、外食需要が増えているのが要因だ。飲食店の100グラム当たりの仕入れ価格は4千~5千円と平年の約2倍となり、札幌市内の飲食店ではウニ丼1杯の価格が1万円を超える店も出てきた。(北海道新聞2022/12/4)
札幌市中央区の海鮮料理の「すぎ乃(の)」では、ウニの仕入れ価格に応じてメニュー価格を変動させており、9月まではウニ丼1杯8千円台だったが、10月から1万円を超えるようになった。今月2日時点では1万1500円に。それでも道外からの観光客は「せっかく北海道に来たから」と注文するという。
店主の杉野勝二さん(57)によると、20年ほど前の仕入れ価格は100グラム1100~1200円程度だった。冬のこの時期は例年なら道内産と北方四島産が流通するが、昨年の赤潮の影響で道内産が品薄に。さらに、国の観光支援事業「全国旅行支援」で来道する観光客が増え、札幌市内の飲食店の間で北方四島産ウニは奪い合いの状況だ。札幌で平均的なウニ丼の価格は、5千円台~7千円台と値上がりしている。
杉野さんは「高くなりすぎているが、道東のウニの生産が回復するのに4~5年はかかる。価格は今後もあまり下がらないのでは」と懸念する。
函館税関によると、「ロシア産活ウニ」の今年1~10月の輸入量は前年同期比4・4%増の7077トン、輸入額は同15%増の86億2300万円(いずれも速報値)。今年の輸入額は過去最高だった前年の97億3700万円を上回る水準で推移する。
ロシア産活ウニの多くが北方四島周辺で漁獲されている。日本の関税法では、ロシアが実効支配する北方四島を「外国とみなす地域」とし、税関は四島周辺水域の水産物を輸入品として扱っている。
ロシアによるウクライナ侵攻後も、日本の対ロ制裁に水産物の禁輸が含まれなかったため、水産物の輸入自体は継続。水産関係者によると、四島水域が禁漁区となる7~9月はウニの輸入が一時的に止まり、10月に再開した。再開以降は身入りが悪く、しけの影響もあって輸入量はそれほど増えていないという。
ウニの品薄と高騰で、加工業者からは悲鳴が上がる。おせちの時期が近づく中、道央圏の業者は原料が調達できないため10月から工場の操業を止めている。経営者の男性は「こんな状況が続くのであれば、中小の加工業者は倒産してしまう」と話す。(今井潤)
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