ロシア人島民、思い揺れ ウクライナ侵攻10カ月、関係冷え込む日ロ

 ロシアのウクライナ侵攻開始から24日で10カ月を迎える。侵攻の長期化で日ロ関係が冷え込む中、これまで日本人との交流を重ねてきた北方領土のロシア人島民の思いが揺れている。互いに行き来するビザなし交流の復活など関係改善を望む声がある一方、対ロ制裁を発動し「非友好国」となった日本への反発も強まっているからだ。先行きへの不安もあり、日本への関心自体が低下しつつある。(北海道新聞2022/12/24)

■交流再開望む声/進む関心の低下

 「私の知る限り、島民の半数は日本との交流が早く復活することを望んでいるよ」。12月上旬、色丹島のロシア人男性は北海道新聞の電話取材にこう話した。

 北方領土で暮らすロシア人島民には、1992年に始まったビザなし交流に参加し、日本各地を訪れた人は多い。参加経験がある択捉島民の1人は「交流の歴史を知る人は、また日本に行きたいと思っている。私も日本が大好きだ。日本人の元島民の墓参も再開しないとかわいそうだ」と話した。

 ただロシア政府は3月、ウクライナ侵攻に対して厳しい対ロ制裁に踏み切った日本などを非友好国に指定。日本とのビザなし交流も中止し、9月には政府間合意を一方的に破棄した。国後島の30代島民は「日本はロシアの敵だ、日本の方が悪いと考え方を変えた人もいる。島内の意見は割れている」と明かした。

 この島民は、侵攻の長期化や部分動員などにより、島内には将来の生活への不安も広がっていると説明。「正直、島の人々には日本との関係やビザなし交流の復活について考える余裕はない」とも語った。

 色丹島では新しいアパートや水産加工会社の大きな社屋が建設され、道路の舗装も進む。以前は日本との共同経済活動で実現を模索していた国後、択捉両島のごみ焼却施設は、ロシア政府が主導する形で3年以内に建設が計画されている。色丹島民の1人は「開発は進み村も少しずつ『町』になってきた。島の生活に不安はない」と強調したが、国の戦費負担の拡大で、四島開発にもブレーキがかかるとの観測が出ている。

 また、択捉島の男性は「漁業を中心に大陸からの出稼ぎ労働者が増えている。彼らは日本との関係には何の興味もない」と島内の変化を指摘。「日ロ交流は復活すると思うが、今は時間が必要だ。数十年かかるかもしれない」と話した。(渡辺玲男)

 

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