次世代に展望示す責任 千島連盟の後継者連絡協議会会長・小野瀬稔之さん(61)=標津町<四島よ私たちの願い 日ロ交渉停止>27 

 標津町の漁業者、小野瀬稔之さん(61)は、千島連盟根室管内後継者連絡協議会(後継連)の会長。約10年前から後継連の活動に長男渉さん(35)と共に臨んでいる。「元島民2世といっても還暦を過ぎた。将来を考えると、バトンタッチを急がないと」。1月下旬に札幌で開かれた連盟の研修にも一緒に出席した。(北海道新聞根室版2023/2/2)

 母の喜枝子さんは択捉島紗那村出身。12歳だった1947年9月に樺太・真岡(ホルムスク)の収容所へ送られた。島の港からロシアの貨物船に乗る時は、10人ほどが大きな網の袋に入れられて物のように積み込まれた。引き揚げ後も、一家は国に言われるまま道内や青森県を転々とした。島でロシア人と共生していたため、住む先では「ロシアに染まった」と差別される人も多かったという。

 「祖父は島のことを話したがらなかった」と小野瀬さん。財産を奪われ、引き揚げ後も苦しんだ元島民たちに思いを致し「祖父たちの存命中にかなわなかった夢のためにも」と活動を続けている。

 ただ、署名やパネル展で札幌など大都市に出向くと「領土問題が置き去りにされ、根室管内とは温度差がある」と肌で感じる。地域で行われる修学旅行生への語り部活動についても「教師にも歴史を知ってもらう場が必要だ」と力説する。

 当の千島連盟も会員減が続く。「SNSも活用して全国へ輪を広げたい。それには、世代を超えて活動しないと」

 日ロ関係が冷え込む今こそ「四島の活用」も練っておくことが2、3世の宿題だと考えている。「若い世代に『北方領土ってこんなに魅力的なんだ。返ってほしい』と思われるような展望を示したい」(森朱里)

 

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