シベリア抑留体験を語り継いでいる宗谷管内利尻町の漁業吉田欽哉さん(97)を招いた講演会が18日、帯広市内で開かれ、吉田さんが4年間にわたる過酷な抑留体験や、現在も進まない遺骨収集の現状を語った。(北海道新聞十勝帯広版2023/6/19)
シベリア抑留体験者の証言を聞く帯広市民の会の主催。吉田さんは終戦直前の1945年、当時19歳で衛生兵として樺太(サハリン)へ渡った。終戦後、旧ソ連軍に拘束され、沿海地方やハバロフスクなど各地で肉体労働を強いられた。
講演で、吉田さんは収容所の生活について「黒パンとスープしか与えられず、常に空腹で、石ですら食べ物に見えた」と振り返った。抑留中、約80人の遺体整理を行い、「いつか遺骨を日本に持ち帰る」と決意したという。
2019年に国の遺骨収集調査事業で埋葬地を訪れたが、ロシアのウクライナ侵攻の影響などで、それ以降は渡航できていないことにも触れた。その上で「いまだに多くの人の遺骨は見つかっていない。政府は遺骨収集にもっと熱心に取り組んでほしい」と訴えた。
講演会に参加した帯広柏葉高校3年生の村中迪唯さん(17)は「実際の話を初めて聞くことができて良かった」と話した。(西山花音)
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