北方領土で繁殖期を迎えたヒグマの活動が活発化し、居住地での出没が多発している。択捉島の地元紙「赤い灯台」によると7月中旬、中心地・紗那(クリーリスク)の市街地にヒグマが現れ、通報を受けた地元当局が射殺。同じ日にはロシア軍の村となっている瀬石温泉(ガリャーチエ・クリューチ)で監視員が襲われた。その数週間前には紗那の幼稚園にヒグマの親子が出没し、園児らが急いで建物内に避難する騒ぎも発生していた。(北海道新聞2023/7/20)
国後島でも6月ごろから、通信アプリ「テレグラム」に観光客が海岸で遭遇したことなどが多く投稿されている。国立クリール自然保護区によると近年、ヒグマの個体数は増加傾向だという。北方四島を事実上管轄するサハリン州の地元行政府は、音を鳴らすなど遭遇を避ける方法を通信アプリで周知したり、講習会を開いたりして対応に追われている。
四島は元々、人の居住地と大自然との境界線があいまいだ。7月中旬、国後島のある島民は、ダーチャ(農園付き別荘)を4頭のヒグマに「占拠」されたため地元当局に通報したものの、「そこは元々、生息地だ」と諭されたという。
ただ、島ではごみの放置や、増え始めた大陸からの観光客による餌付け、ハンター不足などもヒグマとの遭遇が増える要因と指摘され、自然保護区は6月末、公式サイトで「『クマへのサービス』は控えるようお願いする」などと注意喚起した。四島も北海道本島と同じ課題に悩まされているようだ。(本紙取材班)
国後島古釜布(ユジノクリーリスク)と泊(ゴロブニノ)を結ぶ道路で6月に撮影されたヒグマ。居住地への侵入が相次ぐ(国立クリール自然保護区ホームページより)
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