クリル自然保護区はモスクワの農業大学の学生とともに、国後島と色丹島の主要な観光ルートに対する人間の影響を研究し、評価する調査を実施した。この結果、国後島の同保護区内にあるエコトレイル「ストルボフスカヤ」とゴロヴニン火山(泊山)のカルデラ、色丹島のクライ・スベタ岬(世界の果て岬=エイタンノット崎、保護区「小クリル列島」内)で観光客による踏みつけなどの影響で環境が悪化していることが明らかになった。毎年、多くの観光客が自然を楽しむために島々を訪れ、人気の観光ルートを探索しており、必然的に環境に悪影響を及ぼしている。このため同保護区の科学担当副所長エレナ・リニクさんは、ティミリヤゼフ国立農業大学の3年生とともに、インターンシップの一環として主要な観光ルートに対する人為的負荷を評価した。科学者らは、小道の幅と深さ、土壌の状態、植物、瓦礫、火災の有無、観光客グループの数、レクリエーション目的の滞在エリアの状況を調査し、以前の状態に戻すことが可能であるかどうかを評価した。ほとんどの場合、観光客は道を踏みつけたり、木の幹に切り込みを入れたり、枝を折ったり、薪を集めたり、焚火をしたり、ベリーやキノコ、花を摘んだりして、自然にダメージを与えている。踏みつけのせいで、自然システムの生態状態は悪化しており、特にエコトレイル「ストルボフスカヤ」が観光客の行為によって最も大きな被害を受けているという。学生のエレナ・ナスキダエワさんは「隣接する土壌と比べて道が最も広くて深い。つまり、人々による踏みつけが非常に激しい」と説明した。また、観光客が増加している色丹島のクライ・スベタ岬へのルートでも影響は深刻で、植物が減少し、いずれ雑草だけが残ることになるという。エレナ・リニクさんは「観光ルート沿いで見られる希少種の状況を非常に心配している。そのうちのいくつかは私たちの島でのみ生育している。私たちの使命は、できるだけ多くの訪問者にできるだけ長く鑑賞してもらうこと。これらのルートでの観光客による負荷を軽減するための規制やインフラ、ナビゲーションの改善、環境教育の実施など一定の措置を講じる必要がある」と語った。エレナ・ナスキダエワさんは、収集した資料に基づいて、観光ルートごとに人為的負荷の状況を段階的に示す保護区の地図を今年末までに作成する予定だ。(sakhonline2023/8/4)
クライ・スベタ岬(世界の果て岬)のルートの入口。人為的負荷ステージ3の状態。2023年7月、色丹島。エレナ・リニク撮影
ゴロヴニン火山(泊山)のカルデラで調査するティミリャゼワ大学(モスクワ)のエレナ・ナスキダエワさん。2023年7月、アナスタシア・ツィデンコワ撮影
ゴロヴニン火山のカルデラ内にある、たき火の跡がある観光キャンプ。人為的負荷ステージ5の状態。2023年7月、エレナ・ナスキダエワ撮影
エコトレイル「ストルボフスカヤ」への入口。 植生のない地域が見られ、踏みつけの結果、水の浸食を受けている。人為的負荷ステージ5の状態。2023年7月、エレナ・ナスキダエワ撮影
背の高い草に囲まれた森にあるエコトレイル「ストルボフスカヤ」の一部。絶え間なく踏みつけられた結果、土壌が圧縮され、水が地面に入ることができなった。訪問者は浸水地域を迂回するため、トレイルの幅が広くなる。2023年7月、エレナ・ナスキダエワ撮影
クライ・スベタ岬(世界の果て岬)へ向かうルートの途中。人為的負荷ステージ3の状態。 2023年7月、色丹島。エレナ・リニク撮影
クライ・スベタ岬(世界の果て岬)の展望台。草の種類が減少するなど植生被覆の変化が見られる。人為的負荷ステージ4の状態。2023年7月、色丹島。エレナ・リニク撮影
国後島のオホーツク海側、クルーグルイ岬(ブニ崎)で調査するクリル自然保護区の科学部門の専門家と学生。2023年7月、エレナ・リニク撮影
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