日本と米国、北欧の企業連合が、北極海を経由して日本と北欧を結ぶ海底光通信ケーブルの日本側の陸揚げ地点について、苫小牧市を軸に検討していることが22日、分かった。2026年末の運用開始を目指す。欧州まで直接結ぶ海底ケーブルは実現すれば国内初で、苫小牧周辺にデータセンター(DC)などが集積する弾みになりそうだ。(北海道新聞2023/9/23)
事業主体は大手商社丸紅の子会社アルテリア・ネットワークス、フィンランドの国営企業シニア、米通信会社ファー・ノース・デジタルの3社が22年10月に設立した「ファー・ノース・ファイバー」(FNF、米国)。ケーブルは全長約1万5千キロで、総事業費は11億ドル(約1600億円)。事業には欧州連合(EU)も出資し、今春から具体的なルートの検討が行われている。
関係者によると、シニアが主導した18年の当初計画では北欧からロシアの沿岸を通って石狩市内で陸揚げする予定だったが、ロシア側の協力が得られず白紙に。ノルウェーやアイルランドからカナダ、アラスカを経由して日本まで敷設するルートに見直された。苫小牧は北方領土周辺を通らなくて済む安全性、札幌や千歳と近い利便性から「期待は高い」(関係者)といい、市や漁業者との交渉を今後本格化する。
FNFは日本側の陸揚げ地点は道内と道外に1カ所ずつ設ける方向で、道内は苫小牧を含め太平洋側の複数の候補を検討している。道外の陸揚げは関東地方で検討中。早ければ年内にもルートを決めた後、敷設に着手するとみられる。
データ通信は距離が長いほど遅延しやすくなる。北極海経由のルートはインド洋経由など日欧を結ぶ従来ルートより短くなるため、通信時間が30%程度短縮されると見込まれている。海底ケーブルの陸揚げ地点の近くにはDCなど情報通信産業が集積する傾向があり、苫小牧での陸揚げが実現すれば、道央圏に先端産業の集積を図る「北海道バレー構想」が一気に加速する可能性もある。
北海道は物理的に北米と近いことから海底ケーブル陸揚げの適地と期待されており、政府はDCと海底ケーブルの地方分散の観点から、これらの施設を道内で優先整備する方針を示している。(堀田昭一)
コメント