豪華ホテルや温泉も 観光地化が進む北方領土 対露制裁でロシア人旅行客が増加

ロシアのウクライナ侵攻によって日露関係が悪化し、ビザなし渡航の中断が続いています。元島民が北方領土を訪れることができなくなって4年。島はいまどのようになっているのか、ロシア人のカメラマンが択捉島に入りました。(STV札幌放送 2023/10/7)

豪華ホテルや温泉も 観光地化が進む北方領土 対露制裁でロシア人旅行客が増加(STVニュース北海道) – Yahoo!ニュース

ロシア人旅行客でにぎわう択捉島

(ウラジーミル・ラブリネンコさん)「択捉島に取材に入りました」

STVモスクワ支局が撮影を依頼した、カメラマンのウラジーミル・ラブリネンコさんです。長年、北方領土など極東地域を取材してきました。

北方領土で「最大」の島

温泉を楽しむロシア人旅行客

今回訪ねた択捉島には、およそ6500人のロシア人が暮らしています。サケなどの水産加工が島の産業の中心です。その択捉島にはいま、モスクワなどから多くの旅行客が訪れています。ウクライナ侵攻に反対する国々からの制裁で海外旅行をしづらくなったことが影響しているといいます。

夏休みに訪れたロシア人

(モスクワから来た人)「私はモスクワから来ました。夏休みをこの素晴らしい場所で過ごすことにしました。ここの島は素晴らしい。温泉・風景・魚釣り。私は感動しました」

(モスクワから来た人)「私達はもう5回択捉島に来ています。素晴らしい魚釣り、自然も良い。名所旧跡も多いし、何と言っても健康に良いお風呂」

“最後の秘境”ともいわれる北方領土は、自然好きが多いロシア人にとってもってこいの場所。

最後の秘境”北方領土の自然を楽しむ

こちらはモスクワから来た観光客が参加した、戦前からの景勝地「ビラ海岸」への日帰りツアーの様子です。

「ビラ海岸」への日帰りツアー

4輪駆動車を使って道なき道を走る醍醐味。オホーツク海側に続く石灰岩の海岸線は、ビザなし渡航で訪れた日本人にも人気でした。

観光特需に沸く択捉島

(モスクワから来た人)「極東には以前から来たいと思っていました。土地が広くてこの素晴らしい場所を見たかった。ここに来られて私はとても嬉しい。40年の人生で初めてです。またここに帰ってきたいと思っています」

(ツアーガイド)「(択捉島の)観光はいま活況です。以前は手つかずの自然に興味があるごく一部の人しか来なかった。いまは多くの人が極東の美しさに惹かれているのです」

1泊7万5000円以上の豪華ホテルも

夏休みのこの時期、数軒しかない島のホテルはどこも満室でした。こちらは1人1泊7万5000円以上の豪華ホテル。宿泊者の取材は認められませんでしたが、高所得者や要人からは人気を集めているといいます。そのすぐ隣には新たなホテルの建設も進んでいました。

高所得者に人気のホテル

新たなホテルの建設も進む

こちらはいま流行りのグランピング施設。ことし6月にオープンしたばかりです。中に入ってみると、自然を間近に感じられる大きなベッドに、奥にはトイレやシャワーまで。テントでキャンプ気分を味わいながら快適な時間を過ごすことができます。

グランピング施設もオープン

(ウラジーミル・ラブリネンコさん)「1泊いくらですか?」

サンクトペテルブルクから来た人)「1泊2万5000ルーブル(約3万8000円)」

(ウラジーミル・ラブリネンコさん)「高すぎませんか?」

サンクトペテルブルクから来た人)「いいえ。都会で働いている者にとっては問題ありません」

捨てられた大量のごみ

その一方で、取材では現実も目にしました。

(ウラジーミル・ラブリネンコさん)「ここは択捉島のゴミ捨て場です」

観光客の増加に伴って増える一方のごみ。島には処理できる施設がまだなく、大勢の観光客を迎えるだけの環境が整っていないのが現状です。

実効支配続く北方領土 ウクライナ侵攻で交流中断

もともとこの島は戦前、北洋漁業で栄え、日本人およそ3600人が豊かに暮らしていました。しかし、ポツダム宣言を受諾し終戦を迎えたばかりの1945年8月28日に旧ソ連軍が上陸。それ以降、実効支配されたままいまに至っています。

戦前は北洋漁業で栄えた択捉島

日露の交流が途絶える

こうしたなかでも、新型コロナが拡大する前まではビザなし渡航で日本人も毎年島を訪れていました。しかし、ロシアがウクライナ侵攻を始めたあと、日本の制裁に対する報復措置として、ロシア側は交流事業と自由訪問について「中断」を通告。日本との交流が途絶えたことについて島の人はー

島のロシア人「残念に思わない」

(島民)「私は残念には思わない」

(ウラジーミル・ラブリネンコさん)「経済など島に変化はありますか?」

(島民)「いいえ。何もありません」

(島民)「逆に毎年多くの店ができて、工事用の店が繁盛しているし、食料品店がオープンしています」

ロシア化が着々と進む北方領土

街の中心部にあるコンビニ

街の中心にあるコンビニです。

(ウラジーミル・ラブリネンコさん)「こんにちは」

ビザなし渡航で訪れた日本人が必ず立ち寄る場所でした。

(ウラジーミル・ラブリネンコさん)「野菜はロシア・中国・ウズベキスタンキルギス産があります。インスタントコーヒーには日本製もありました」

野菜や加工食品を販売

(ウラジーミル・ラブリネンコさん)「主に商品はどこから来るのですか?」

(店の従業員)「色々ですが主にウラジオストクユジノサハリンスク

店内にはさらにソーセージなど加工肉に加え、パック詰めされた惣菜も。現地に暮らすロシア人の生活を支える基盤として、地元に根付いていました。

ロシア人も眠る「紗那墓地」

こちらもビザなし渡航で日本人がよく訪れた場所です。北方領土に52ある墓地の中でも2番目に埋葬者数が多いのがこの紗那墓地。

(ウラジーミル・ラブリネンコさん)「よくも悪くもないですね。ロシア人の墓と同じような状態ですね」

戦後は公営の墓地としてロシア人も眠るようになりました。

元島民は2019年から墓参できず

(ウラジーミル・ラブリネンコさん)「こちらは草が少し取ってありますね。誰かが世話をしているみたいですね」

ロシアは「北方墓参」だけは人道的見地から認めるとしていますが、実際には交渉が停滞。元島民たちは2019年以降ずっと、先祖の墓の前で手を合わせられていないのが実情です。

観光地へと姿を変える択捉島

日本人が訪問できなくなって4年。島のロシア化が着々と進むのと同時に、少しずつ観光地へと姿を変えつつあるようです。

 

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