国後島のクリル自然保護区の鳥類学者セルゲイ・ステファノフ氏が10月5日から8日までロシア南部の北コーカサス連邦管区スタヴロポリ準州ディヴノエ村で開催された第5回国際ツル会議に出席し、「南クリル諸島(北方四島)のタンチョウ」についてプレゼンテーションを行った。ロシア、カザフスタン、モンゴルの鳥類学者が参加した。1940年代に臨界点まで減少したタンチョウは保護措置により回復し始め、北海道の冬季調査によると現在は1,900羽まで回復(タンチョウの総個体数は4,000羽と推定)。歴史的にサハリン島の南部、日本の北海道、本州の北部に生息してきたが、現は北海道とクリル諸島南部に限定されている。クリル諸島南部への定着は新しい現象で1968年に初めて記録された。1984年にクリル自然保護区が設立されて以降、国後島と小クリル列島(歯舞群島と色丹島)で営巣が確認されている。「現在、国後島に7組、歯舞群島と色丹島に5組のつがいが営巣しているが、この8年間で繁殖したのは14羽だけだった。繁殖率が低いのは、アクセスしにくい場所での観察が出来ないことも一因だ」と鳥類学者は指摘した。また、クリルのタンチョウは定住性の個体群に属しているにもかかわらず、毎年、ほとんどが越冬のために隣の北海道へ移動している。国際会議が開催されたディヴノエ村は、カスピ海とアゾフ海の間、マニチ川流域に位置し、珍しいアネハヅルが営巣し、ハイイロヅルの渡りの中継地になっている。会議では個体群の状況、保全の問題、渡りと越冬、飼育下の繁殖、環境教育などが議論されたほか、ドローンなどを使用した遠隔調査方法や個体数現象の要因となる中毒、鳥インフルエンザなどの問題も提起された。(サハリン・メディア2023/10/20)
渡りの中継地となっている収穫後の農地に約300羽のハイイロヅル
クリル自然保護区の鳥類学者セルゲイ・ステファノフ氏のプレゼン
ユーラシアツル作業部会の事務局長であり、タンチョウ保護国際ネットワーク副会長のエレナ・イリヤシェンコ氏(左から2人目)が特別な迷彩服を着てプレゼン。
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