北方領土・色丹島を拠点とするロシアの船舶・旅行業「ボストークツアー」が、ロシア極東ウラジオストクと石川県七尾市を結ぶ旅客船を就航させ、初便が23日、七尾港に到着した。昨年2月のロシアのウクライナ侵攻後、日ロ間の旅客の直行便は空路を含めて初めてとみられる。国土交通省は旅客船の運航は対ロ制裁に抵触しないとしており、同社は「定期便」として今後も運航するとしているが、日ロ関係が悪化する中、先行きは不透明だ。(北海道新聞2023/10/24)
旅客船は646トン、乗客定員43人で、過去に神奈川県の高校の漁業実習で使われた退役船を購入し、改修したとみられる。船は日本時間20日夕にウラジオストクを出航。七尾港の港湾関係者によると、今回の乗客はロシア人観光客2人で、24日にウラジオストクに向けて出航する便には、乗客6人が乗船予定という。
ウクライナ侵攻に対する日本の対ロ制裁は、日ロ間の旅客便の運航を規制していないが、侵攻後、航空路線は運航を停止している。海路も貨物船などを除き運航していないとみられ、日本政府は今回のロシア船就航について「異例だ」(国交省関係者)としている。
ボストークツアー社によると、料金は片道6万7600ルーブル(約10万円)からで、同社の担当者は取材に「来年5月中旬まで定期便で運航する」と説明。所有する余剰船を活用し、ビジネス需要も想定して運航を決めたといい、「今後、より大きな船を投入する計画がある」と説明した。
ただ、同社が採算を取れるだけの旅客を確保できるかは不透明だ。サハリン州では今夏、ロシア側がコルサコフ―稚内間の旅客船運航を計画したが、立ち消えになった経緯がある。七尾の港湾関係者は取材に「需要が続くか危惧している」と話した。(本紙取材班)
客船「プレイオーナ」(ボストークツアーのウエブサイトから)
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