北方四島でラッコ増える2001年の14倍に 歯舞群島は516頭 コマンドルスキー、カムチャツカ、北千島は減少

 ラッコ保護に関する専門家による2023年第2回会合が10月30日、モスクワのロシア科学アカデミー生態進化研究所でオンライン形式で開催された。会議には連邦保護区や研究機関、団体など13機関の専門家が出席。国後島のクリル自然保護区からは、科学活動担当のE.V. リンニク副所長が参加し「2022年の小クリル列島(色丹島歯舞群島)のラッコの数と今後の見通し」と題してプレゼンテーションを行った。

 報告者のほとんどは、ロシアの生息域の主な地域であるコマンドルスキー諸島やカムチャツカの島々、クリル諸島北部(シュムシュ島とパラムシル島)のラッコの個体数が減少傾向にあると指摘した。ロシア科学アカデミー理研究所/科学アカデミー極東支部太平洋地理研究所のS.I.コルネフ氏は、シュムシュ島とパラムシル島周辺での2023年のラッコ個体数調査の結果、20年前(2003年)と比較して96%(15,000頭から541頭)減少したと報告した。カムチャツカの東海岸沖やコマンドルスキー諸島でも餌となる食糧資源の枯渇や沿岸での漁業活動などによって個体数が減少している。

 一方、クリル諸島南部のウルップ島、択捉島国後島、小クリル列島付近では、ラッコの個体数は増加傾向にある。択捉島が230頭、ウルップ島は1,299頭で安定し、小クリル列島では471頭(うち子供を連れた雌が290頭、40.3%=2022年のクリル自然保護区調査による)で、2001年に比べて14倍に増えている。さらに2023 年、海洋生物を研究しているフィンバル研究センターの調査では、小クリル列島(現在ラッコが生息していない色丹島を除く)のラッコの数は516頭で、そのうち248頭(48%)が子を連れた雌だった。

 小クリル列島がラッコをひきつける主な要因としては、多くの入り江や小島が点在する険しい海岸線があり、水深が浅く(最大50m)、食料源であるウニを含む多様な底生生物が密集し、ラッコがほとんどの時間を過ごす藻類が繁茂する海域が広がっていることが挙げられる。全ロシア海洋漁業研究所(VNIRO=ヴニロ)の調査によると、小クリル列島の島々の近海は、ウニが大量に育ち、褐藻類の広大なフィールドが認められ、水域全体の深度が最大50mより浅くなっている。

 リンニク副所長は「ラッコの数は利用可能な資源に基づいて、最適な密度に達するまで増加する」という予測を提示し、将来的には少なくとも 1,300頭になる可能性があるとした。「北西太平洋におけるラッコ繁殖地の最南端に位置する小クリル列島は、クリル自然保護区の海洋保護区内(デミナ諸島)と連邦自然保護区「小クリル列島」(ポロンスキー島、ゼレニー島、ユーリ島、タンフィリエヴァ島)に指定され、ラッコとその生息地は国の保護下にあるという点を強調したい。これにより、人間の経済活動を規制することができ、この美しい動物を保護することができている」と述べた。

 ラッコは18 世紀から 19 世紀にかけての集中的な狩猟活動の結果、生息地は減少し、絶滅の危機に瀕した。人間がアクセスできない場所でのみ彼らは生き残った。1926年以来、ソ連=ロシアではラッコ猟は禁止されている。数十年間の保護の結果、1980 年代までにロシアでの個体数はほぼ回復した。クリル諸島(北方四島を含む千島列島)におけるラッコの調査データ(1986年から2001年)によると、総数は9,000頭強で、そのうち北クリル(北千島)5,000頭、中クリル(中部千島)400~600頭、南クリル(南千島)のウルップ島、択捉島国後島、小クリル列島(色丹島歯舞群島)で3,500頭以上だった。(クリル自然保護区ウエブサイト2023/11/8)

К – Калан – YouTube

小クリル列島のラッコ(イゴーリ・サマリン撮影)

ラッコ (アレクサンドル・チホノフ撮影)

小クリル列島は北西太平洋の最南端にあるラッコ繁殖の本拠地(イゴーリ・サマリン撮影)

クリル諸島で調査するフィンバル研究センターの三胴船(アンドレイ・セミノフ撮影)

小クリル列島のラッコの生息地(オルガ・ソコヴァ撮影)

ロシア科学アカデミー生態学研究所で開かれたラッコ保護に関するオンライン専門家会議(2023 年 10 月 30 日)

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