釧根で相次ぐ鳥インフル タンチョウ、ハクチョウなどから早くも4例

 国の特別天然記念物タンチョウの生息地と、国内有数の野鳥飛来地を抱える釧路・根室管内で、高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5亜型)の検出が相次いでいる。タンチョウとオオハクチョウでのウイルス検出が7、8日、新たに発表された。9月以降の今季、野鳥の感染は全国7例で、うち4例が釧根管内に集中。野鳥の越冬や渡りのシーズンが本格化するのはこれからで、関係者は感染拡大を防ぐために衰弱個体の早期発見を目指すなど、警戒を強めている。(北海道新聞釧路根室版2023/11/9)

■飛来ピークこれから 衰弱個体を警戒

 釧路・根室管内で高病原性ウイルスが確認されたのは、昨年同期は1例のみ。釧路総合振興局の高橋良幸農務課長は「昨年と比べて感染の拡大時期が早くなり、目に見える形でリスクが高まっている」と危機感を語る。

 タンチョウのウイルス確認を受け、国の給餌場(釧路管内3カ所)、道の給餌場(釧路管内10カ所、根室管内3カ所)はともに16日以降を予定していた給餌開始を23日以降に延期した。ウイルス拡散が懸念される中で個体の密集を防ぐ狙い。

 NPO法人タンチョウ保護研究グループ(釧路市)は2日、昨年に続き、冬にタンチョウが集まる釧路管内のねぐら2カ所に監視カメラを設置した。百瀬邦和理事長は「今のところねぐらにはまだ集まっていないが、感染拡大を防ぐためには衰弱個体を早く見つけたい」と強調する。

 道や厚岸町によると、8日にウイルス検出が発表されたオオハクチョウは、10月31日に国設鳥獣保護区の別寒辺牛川で回収された個体。町は8日に町感染症対策本部会議を開き、防災無線などで「衰弱している野生動物を見つけた場合は、素手で触らないように」などと町民に呼びかけた。

 高病原性ウイルスが確認された野鳥4羽の回収地点から半径3キロ以内には鶏などの家禽を飼育する大規模農場はないため、農場での消毒作業や殺処分などは行われない。環境省も回収地点から半径10キロ圏内を野鳥監視重点区域とし、野鳥の大量死や異常がないか監視を強化する。

 ラムサール条約湿地の風蓮湖・春国岱を中心に370種類ほどの野鳥が確認される根室市では冬期、ハクチョウやオオワシなどの観察を楽しむ観光客も国内外から集まる。高病原性のウイルス検出は今年3月に根室市内でもあり、根室振興局環境生活課は「野鳥の観光シーズンも到来するため、注意してほしい」と呼びかけている。

 根室市は春国岱原生野鳥公園ネイチャーセンターの交流サイト(SNS)を通して、野鳥観察後に靴裏やカメラの三脚を消毒するよう改めて周知する方針だ。(先川ひとみ、野口今日子、大滝伸介)

標津のタンチョウから鳥インフル 高病原性か 道など警戒強める

(北海道新聞デジタル2023/11/9)

 道は9日、根室管内標津町で6日に回収されたタンチョウの死骸1羽からA型鳥インフルエンザウイルスの陽性反応が確認されたと発表した。環境省が国立環境研究所(茨城県つくば市)に依頼し、致死率の高い高病原性かどうかを確かめる。今季(9月以降)は既に道内で高病原性に感染した野鳥が5羽確認されており、道などは感染拡大に警戒を強めている。

 道などによると、標津町で死んだ状態で見つかったタンチョウは2羽で、このうち1羽を環境省が簡易検査し、A型鳥インフルの陽性反応があった。もう1羽は死骸の損傷が激しく、検査できなかったという。

 国の特別天然記念物のタンチョウが高病原性鳥インフルに感染した事例は全国で過去2例しかなく、直近は今年10月25日に同管内別海町で回収された死骸1羽。

 ツルの越冬地で知られる鹿児島県の出水市では昨季、タンチョウと同じツル科のナベヅルやマナヅルで鳥インフルの集団感染による大量死が確認されている。

 NPO法人タンチョウ保護研究グループ(釧路市)によると、今回死骸が見つかった標津町など根室管内北部のタンチョウの多くは冬季、内陸部を経由して釧路管内鶴居村などの国の給餌場付近に集まるという。

 百瀬邦和理事長は「国や道の給餌場のほか、個体が多く集まる牧場の監視も強化するべきだ」と指摘。標津で回収された死骸は他の動物に食べられた形跡があることから「他のカラスや猛禽(もうきん)類などが食べてウイルスが広がる前に、速やかに感染個体を回収することが重要だ」と強調した。(佐藤諒一、小野田伝治郎)

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