若い世代に北方領土問題への関心を高めてもらおうと択捉島出身の元島民の女性による講演会が音更町の小学校で開かれ、領土問題の早期解決を訴えました。講演したのは、択捉島出身で、帯広市に住む安田愛子さん(84)です。5日、音更町の木野東小学校で小学6年生の児童90人を前に当時の島の暮らしなどを語りました。安田さんはかつて暮らした島の北東部にある蘂取村の豊かな自然や村の祭りなどを紹介したあと、終戦まもない昭和20年8月に旧ソ連が島に上陸した当時の状況について、「ソ連兵とその家族たちは日本人の家などに住み、私の家にも若い将校が1人寝泊まりしていました」と振り返りました。また、当時通っていた小学校についても「日本人は普通教室で、ソ連の子どもたちは体育館で勉強していました。私は一緒に遊んだ記憶はあまりありません」と語りました。北方領土の「ビザなし交流」で平成20年に蘂取村に帰った時のことについて「船から砂浜に上がったときには涙が出て止まりませんでした。たくさんあった家は何もなくただ砂浜と草むらになっていました」と語りました。安田さんは終戦当時約1万7000人いた元島民は高齢化などで今は5200人ほどに減ってしまった状況に触れ、「ひとりひとりの返還運動が国民の声として国を動かし、早期返還につながるものと信じています。どうぞ皆さん北方領土を忘れないでください」と呼びかけ、戦後78年を迎えてもなお遅々として進まない北方領土問題の1日も早い解決を訴えました。男子児童の1人は「北方領土の地理や、当時の島の生活などがよく分かりました。北方領土の歴史を多くの人に伝えていくことが大切だと感じました」と話していました。(NHK北海道NEWS WEB2023/12/5)
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