国後の空港、整備加速 濃霧欠航、25年までに改善へ プーチン氏、往来増狙い開発主導

 ロシア政府は17日、北方領土国後島メンデレーエフ空港を整備し、濃霧による欠航が常態化している現状を2025年までに改善する方針を明らかにした。悪天候下でも航空機の正確な着陸を誘導する装置を導入する予定で、国後島との人・モノの往来が大幅に増える可能性がある。3月に大統領選を控える中、プーチン大統領が地元の要望に応じて指示した形で、実効支配する島の開発を主導する姿勢を鮮明にした。(北海道新聞2024/1/19)

 国後島唯一の空の玄関口となる同空港を巡っては、同島の旅行業経営者が11日に極東ハバロフスクで開かれたプーチン氏との会合で「観光ピーク期の欠航率が45%に上る」と窮状を直訴した。これを受けてプーチン氏が17日に開いた政府の会合で、サベリエフ運輸相が対応策を説明。25年までに着陸用の「照明・信号装置を設置する」とし、「困難な気象条件でも受け入れが可能になる」と語った。

 同空港は島南部に旧日本軍が建設し、約2千メートルの1本の滑走路がある。施設の劣化で06~07年に約3カ月間閉鎖された後、滑走路の修繕などを経て利用を再開。12年には夜間の離着陸を可能にする発光信号装置が設置された。現在はロシアのオーロラ航空がサハリン州の州都ユジノサハリンスクと1日1往復の定期便を運航している。

 ただ、最も利用客が多い夏場に濃霧が頻繁に発生する上、滑走路の近くに山があり視界不良で衝突の危険がある。17年に同州のコジェミャコ知事(当時)が改善に向け整備する方針を示していたが、昨年6月には5日間連続で欠航。択捉島のヤースヌイ空港と比べても航空会社が早期に運航をとりやめるケースが目立ち、関係者から不満の声が出ていた。

 ロシアでは22年2月のウクライナ侵攻後、対ロ制裁の影響で国内観光の需要が伸び、北方領土への訪問客も増加。サベリエフ氏によると、23年のメンデレーエフ空港の利用客数は22年比8%増の5万7500人に上った。空路の運航が安定すれば、さらに観光客などの往来の増加が予想されるほか、国内外からの投資拡大につながる可能性もある。日本政府は北方領土の返還を求めているが、ロシアによる整備が加速する恐れがある。(本紙取材班)

 

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