北大スラブ・ユーラシア研究センターは20日、北方領土と硫黄島(東京都小笠原村)をテーマにしたシンポジウム「戦争、国家、失われた故郷」を東京都港区の明治学院大白金キャンパスで開いた。北方領土と硫黄島の島民の子孫らが戦後80年を目前にしても自由に島に渡れない現状を説明し、記憶を継承していく重要性などを訴えた。(北海道新聞2024/1/21)
ロシアが実効支配する北方領土の国後島民2世の久保浩昭さん(55)=根室市=は、戦前に根室と国後島を結んだ通信用海底ケーブルの中継施設「陸揚(りくあげ)庫」の保存活動などを説明。「啓発運動をマンネリ化させず、新たな風を吹き込むことが大切」と話した。
シンポジウムを発案した歯舞群島志発島3世で写真家の山田淳子さん(41)=東京都=は、元島民1世の写真を撮り続けている活動を紹介。「今でも自由に故郷に帰れない人がいることを、どうか忘れないで」と呼びかけた。
一方、全国硫黄島島民3世の会の会長の西村怜馬さん(41)=東京都=は、記憶伝承に向けた会の取り組みなどを紹介。太平洋戦争の激戦地として知られる硫黄島だが「戦前は豊かな島民の生活があったことも伝えたい」と語った。
戦後、硫黄島は米軍や自衛隊の基地となり自由に墓参もできない。羽切朋子さん(47)=千葉県=は「94歳の祖母は今でも『死ぬ時は硫黄島がいい』と話す」とし、「島民の思いをわれわれが引き継がなければならない」と強調した。
明治学院大国際平和研究所との共催で、約80人が来場。パネルディスカッションのほか、北大の岩下明裕教授、明治学院大の石原俊教授が、それぞれ島の歴史などについて講演した。(今井裕紀)
(共同通信2024/1/20)
第2次世界大戦後、島民が帰還できない状況が続く北方領土と硫黄島を巡り、島民の子孫らが記憶の継承について議論するシンポジウムが20日、東京都内で開かれた。北方領土の元島民3世で写真家の山田淳子さん(41)は「戦後80年近くたっても故郷に帰れない人々がいることを忘れないで」と訴えた。
北海道大スラブ・ユーラシア研究センターが主催し約80人が参加。1929年に北方領土と北海道を結ぶ海底電線の中継施設としてできた「根室国後間海底電信線陸揚施設」の保存活動や、住民の帰島が認められていない硫黄島の戦前の写真と証言を収集・保存する「全国硫黄島島民3世の会」の取り組みが紹介された。
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